×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

SITE MENU


ミステリー・サスペンス・冒険小説2005


電子の星 池袋ウェストゲートパークW /石田衣良

池袋のストリートを駆け抜けるマコト(果物屋とトラブルシューターとフリーライターの兼業)の活躍を描くシリーズの4作目。陰惨な事件を追っている割りに希望を感じさせるのは毎度のことだ。

「東口ラーメンライン」Gボーイズのキング崇の護衛を卒業し、ラーメン屋を開いたツインタワー1号2号の店に、インターネットでの中傷や店へ汚物をまかれる嫌がらせが頻発し、マコトが調査に当たることになる。謎解き自体は簡単で、もう少し複雑な綾が欲しかったところだが、眼目は、ツインタワーの店に雇われている可憐な少女あずみである。店のまかないは食べずに、駄菓子の隠れ食いをするような不審な行動をしているのだが、その裏には悲しい事情があった。長澤まさみがやったらぴったり合いそうな感じのはかなさだ。食べ物にまつわる悲哀と幸福が同居した好篇。

「ワルツ・フォー・ベビー」アメ横を根城にするチーマーのヘッドが殺された事件を、ヘッドの父親のタクシードライバーと知り合ったマコトが調べに当たる。手下に優しく、頼りがいのあったはずのヘッドだが、実は・・・。タクシードライバーはジャズマニアで、車の中には常にジャズが流れているが、ラストシーンの傷心のドライブに付き合ったマコトがリクエストしたのがビル・エバンスの「ワルツ・フォー・デビー」である。何ともおセンチでベタであざといエンディングだが、あのスウィートで抒情的なメロディを思い浮かべると、グッと来るものがあるのだった(笑)。

「黒いフードの夜」果物のくずを貰っていくビルマ人の難民少年と親しくなったマコトは、やがて少年が9才の時から強制的に売春させられていることを知る。少年のためにはえげつない真似も厭わないマコトであり、爽快な活躍ではあるが、自警団的な危うさも孕むような気がする。

「電子の星」マコトの活躍をネット上で知った山形のひきこもりPCマニアから、いなくなった友人を捜してくれとメールが来る。あまりの無礼さに無視していたマコトだが、本人が現れてしまい、致し方なく協力することになる。かなり気味の悪い内容だが、怖じ気づいたひきこもりに「戦わずに逃げるのではなく、せめて負け犬になってみろ」と説教するマコトのメッセージが泣かせる。











ヒートアイランド/垣根涼介

渋谷を舞台に、やくざ、現金強奪犯、チーマーが三つ巴の戦いを繰り広げるハードサスペンス。

非合法カジノの売り上げを盗んだ一味の一人が気のゆるみから分け前をチーマーに盗まれる。チーマーを束ねるアキは、額の多さにまともな金ではないと考え、自分たちが傷を負わずに済む方法を模索するのだ。そして、強奪犯の一味はチーマーを追い、メンツを潰されたやくざは強奪犯を追うことになる。

それぞれの背景が緻密に書き込まれていて読ませる。チーマーを束ね、素人の格闘イベントを興行することで大枚を得ているアキは、バブル崩壊のあおりを食った父親を見てこの世のシステムに懐疑を抱いており、自分の力で生き抜くことを考えている。 アキの相棒で知能派のカオルは、エリート官僚の親に反発し、これも一人で生きることを考えている。強奪犯の方は、職人気質の整備士桃井の来し方が綴られ、いかにして現在に至ったかを綿密に描いている。

人工的な排熱に浮かされる都会でのクールな戦いを描いた好篇だと思う。チーマーが登場するサスペンスというと「池袋ウェストゲートパーク」が思い出されるが、ああいう陽性・正義感とは無縁な感じで、かえってリアリティが感じられる。












ななつのこ/加納朋子

第4回鮎川哲也賞を受賞した、加納朋子のデビュー作である。入れ子構造になっていて、主人公の女子大生駒子が愛読するメルヘンなミステリー「ななつのこ」の内容と関連するような現実の事件が起こり、作者が駒子のファンレターに返信するという形で、事件の謎が解かれる。

デパートの屋上のビニールの恐竜は何故30kmも離れた保育園に現れたのか、子供の頃のアルバムから消えた写真が何故数年後になって郵送されてきたのか、何故白いタンポポを書く子供がいるのか、など、日常のちょっとした不思議を、些細なな手がかりから解き明かす手法はデビューの時から変わっていないらしい。

選評に、主人公の個性が弱いという指摘があったが、その分だけ回りの人物や事物を生き生きと浮かび上がらせているようにも思う。お嬢様の友人、きりりとした友人などとの友情の描き方が上手く、また、可憐で寡黙な少女・真雪との友情が切ない。子供の目線で物事を考えられる駒子なのだ。優しく感傷的な世界もデビューの時からだったのだと思う。童謡に因んだ「ななつのこ」の本編(プラネタリウムから消えた子供の謎)と作中作(貰われてきた子猫が皆消えた訳)のなんと優しいことか。

それにしても、13年も食わず嫌いだった加納朋子である。この「ななつのこ」というタイトルで、童謡をテーマにしたおどろおどろしい民俗ミステリーだと思っていたのである。例えば横溝正史のような・・・(笑)。












魔法飛行/加納朋子

「ななつのこ」の続編。女子大生入江駒子の手紙によって謎が提示され、謎解きの返信があるという形は「ななつのこ」と同様だ。今回もあまり物騒な事件はなく、楽しく優しい世界に仕上がっているが、時々挿入されるストーカー的な謎の手紙によって、全編にサスペンスフルなトーンが流れている。

「秋、りん・りん・りん」駒子に意地の悪い振る舞いをする、見知らぬ若い女子大生は、何故出席票に違う名前を書いたのか。それなのに何故食堂に一緒に行こうと誘ったのか。 この謎解きの見事さに舌を巻いた。

「クロスロード」ひき逃げ事故のあった交差点に、被害者の父親である画家が息子の肖像画を描いたが、その絵は何故白骨化してきたのか。謎解き自体はさほど難しくもないが、駒子の友人の「たまちゃん」を通して、芸術家の焦りのようなものが浮き彫りになった。

「魔法飛行」駒子と共に学祭の受付に座ったリアリストの友人野枝の幼なじみ卓見は、UFOマニアであり、野枝から冷たくあしらわれている。「不思議」を狂言回しにして、素直ではない男女の心理を楽しく描いてみせていると思う。

「ハロー、エンデバー」本編の謎解きについてはネタ晴らしになるので一切書けない(笑)。タイトルは、スペースシャトル・エンデバーに乗り組んでいた毛利衛さんと故郷の子供たちとの交信を見ていた駒子が、「ハロー、エンデバー」という子供たちの呼びかけをドキドキしながら見守っていたことに因むもの。この交信の合い言葉を自分の人間関係に当てはめて考えるているのだ。なんて感傷的で気持ちよいエンディングだろう。












螺旋階段のアリス/加納朋子

穏やかで好人物の主人公・仁木は、一流企業の早期退職制度を利用して探偵事務所を開設する。この始まりだけでも楽しいが、そこ安梨沙という聡明な美少女が迷い込んできて、押しかけ探偵助手になるというオープニングである。「不思議の国のアリス」をモチーフにした、楽しくメルヘンチックな本格連作だが、人情の機微や皮肉も込められ、上質の味わいだ。

「螺旋階段のアリス」探偵としての初仕事は、夫が病死した未亡人が、家の中に夫が隠した貸金庫の鍵を探し出してくれという依頼。遊戯のように離婚再婚を繰り返していた夫婦は現在離婚中で、遺産相続が出来ない羽目になりかねないのである。謎の言葉を残して亡くなった夫の遺言は解けるのか。楽しいコージーミステリーだ。

「裏窓のアリス」自分が浮気していないことを照明しろと言う素行調査を依頼された仁木は、不思議な仕事と思いながら依頼を完了するが・・・。こちらも夫婦をネタにしているがブラックな味わい。

「中庭のアリス」裕福で上品で穏和な老女の飼い犬が消えたが、世話をする親戚の女性は「そんな犬は存在していない」とにべもない。それでも調査していると・・・。薄っぺらな善意を皮肉った小品。 「地下室のアリス」元の会社の地下の管理人の要請で出かけた仁木は、書類室で鳴り続ける電話の謎を解明してくれるように依頼される。会社人間たちの妙ちきりんなプライドが絡む風変わりな作品。

「最上階のアリス」仁木の先輩でもある学者馬鹿の男から、妻は何故自分をちょくちょく買い物に出すのか、という疑問が出される。浮き世離れしたこの先輩の妻は実にしっかり者で、夫を世に出す手助けをしてきた、聡明で活動的な女性なのだが・・・。愛情とも身勝手ともつかない夫婦間の不思議を描いて余韻が残る。

「子供部屋のアリス」産婦人科で子守を依頼された仁木探偵事務所のコンビ。院長は何故探偵を子守に頼むのか。子供の母親を愛しているらしい院長のおたおた振りが微笑ましい。

「アリスのいない部屋」安梨沙が突如出勤しなくなった。安梨沙の父親から娘を隠しているだろうと詰問され、父親を名乗るいけすかない男が現れ、混乱した仁木が独自に調べようとすると・・・。波乱を含みながら妙にホッとする最終編。











掌の中の小鳥/加納朋子

パーティで出会った若い男女が、自分たちの過去に起きたちょっとした謎や、現在進行形の不思議を語り、男の方が謎解きをしてみせる連作ミステリー。安楽椅子探偵型の謎解きも洒落ているのだが、その謎にまつわる事情が、ノスタルジックだったりセンチメンタルだったり苦い思い出だったり、趣の深い物語になっている。

「掌の中の小鳥」偶然出会った先輩との談話の中で、先輩の妻になった友人(才能ある画家の卵だった)の作品が何故メチャクチャにされたかの謎を解く。この過程がスリリングで苦い。

「桜月夜」不倫相手の息子の狂言誘拐に付き合ってしまった女性の行動と、それにまつわる謎を描いた作品。自分勝手なのに魅力があるという不倫相手への愛憎がポイントで、人間の描き方が上手なぁと思う。背景である桜のちょっとした挿話もロマンティックだ。

「自転車泥棒」主人公の女性の自転車が盗まれ、犯人を押さえたはずなのに、何故別の場所から自転車が発見されたのか。謎と、それにまつわるその事情が微笑ましい。活発で陽気な女性も魅力的だ。

「できない相談」短時間のうちに部屋がいかにして取り替えられたかという、イリュージョン的なトリックを解いてみせる。

「エッグスタンド」幼い頃の苦い思い出と現在が交差する。

この作家は、謎の設定も上手いが、なぜそこに至ったかという理由を構築するのにも秀でている。センチメンタルで優しい作風も魅力的で、本格と言うことで今まで敬遠していたのがもったいなかった。











てるてるあした/加納朋子

加納朋子の「ささらさや」は優しく切ない幽霊ファンタジーだが、その姉妹編の「てるてるあした」もよかった。「ささら さや」同様に佐々良市(いろいろ不思議なことが起こる田舎町)を舞台にしていて、登場人物も重なっている。

浪費家で無責任な両親が夜逃げし、佐々良市に住む遠い親戚の元教師の老女(厳格で口が悪くて毅然としている、尊敬すべき老女)を頼らざるを得なかった15才の照代は、すべてが不満な、可愛い気のない反抗的な小娘だが、それでも、おかしな友人が出来たり、悲しい幽霊にまとわりつかれたり、子守を引き受けたり、徐々に佐々良に馴染んでいく。照代の葛藤と成長が読みどころだが、悲しい幽霊の過去も大きなテーマで、親と子の様々な関係が語られていた。

「ささら さや」よりも重たいテーマを含んでいるが、複雑ながらも最後は良かったなぁと思える優しく悲しい物語である。親の都合で厳格な教師に預けられるあたり、「若草物語」でマーチ伯母さんに預けられたエーミーを思わせた(笑)。












百器徒然袋−雨/京極夏彦

スーパーハイテンションで非常識で、乱暴狼藉、傲岸不遜、傍若無人、眉目秀麗な迷探偵榎木津が問答無用で謎を解く(と言うより事件を一応解決する)探偵小説。事件自体は結構陰惨なのだが、コミカルな人間関係に笑わせられる。

知的で陰険な古本屋京極堂あたりはまだ対等の付き合いだが、大体の人間は下僕に見えるらしく、一応は所属の探偵である益田(元刑事)というお調子者などは常に「馬鹿オロカ」と罵られているし、最初、依頼人として登場した語り手の「ぼく」は、不思議な一味の魅力に惹き付けられ、この人たちには近づいては行けないと思いつつも徐々に下僕化していくのである。

ひとの記憶を視る力があると思われている榎木津は、調査も操作も推理もせず、最終的には暴れ回って事件を解決することになっており、デウス・エクス・マキナ的である。いわば水戸黄門の印籠だろうか(笑)。痛快な連作中編集だ。

続編の「百器徒然袋−風」では、榎木津の異常度がパワーアップし、語り手「ぼく」の下僕度もアップしている。最後にちょっとホロリとさせる場面もあったりして、なかなかニクい。












方舟は冬の国へ/西澤保彦

若い失業者が、莫大な報酬と引き替えに、盗聴盗撮装置の仕掛けられた別荘で疑似家族を演じる仕事を引き受ける。仮の妻、仮の娘と共に不自然な生活を送り始めたところで、不思議な現象が起き始める・・・。

最初はいがみ合っていた男女だが、徐々に親しくなり、本来の自分たちのことを語り合う上でちょっとした謎解きがあったりする。この辺が西澤ミステリーらしい。

娘を演じる少女は、偽の両親なのに何故楽しそうに生活しているのか?徐々に生まれてくる疑似家族の絆が切ない。本格ミステリーというより、ファンタジーな家族小説だと思う。










とっても不幸な幸運/畠中恵

 

「酒場」というふざけた名前の酒場のオーナーと酒場に集まる常連たちが繰り広げるセンチメンタルでコミカルでファンタジックな連作ミステリーだ。

「とっても不幸な幸運」という百円グッズによって、思い出したくない過去や苦い未来の幻影を見せられ、その依って来たるところを推理するのだが、この推理自体は大したものではない。そこから導き出される結末が、哀切だったり希望があったり、なかなか読ませるのだ。腕っ節が強くて頼りがいがあって厳しい一面もあって尚かつ娘には弱い、店長のあぶないキャラが楽しい。小生意気な義理の娘との関係はホームドラマなんぞを思わせる(笑)。

この作者は、妖怪と仲良しの病弱若旦那のシリーズで人気だが、どちらがより面白いかと問われれば、やはり若旦那の方かもしれない。と言ってこの作品が詰まらない訳ではない。比較したらの話である、あくまで・・・(汗)。












ウォータースライドをのぼれ/ドン・ウィンズロウ

元ストリードキッドの減らず口叩き探偵ニール・ケアリーシリーズ第4弾。実に6年ぶりの刊行らしい。またもや義父ジョー・グレアムがトラブルを運んで来るという幕開けだ。

レストランチェーンを持ち、ケーブルテレビ局で良質の家族向け番組を放送しているカップルの夫が、愛人のタイピストをレイプしたということでスキャンダルになっているが、その、田舎弁丸出しで下品なタイピストを裁判でも通用するような淑女にせよという、マイ・フェア・レディのような命令がニールに下されるのである。

ニールが所属する朋友会は銀行に附属する、顧客のためのトラブル処理機関だが、このケーブルテレビ局のNO.2と取引があり、経営者追い落としの策略が裏にはあるのだ。タイピストのポリーは、真っ直ぐな気性で、ニールのガールフレンドや、ケーブルテレビ局経営者の妻とも仲良くなってしまうあたりが笑える。この仮面夫婦は、テッド・タナーとジェーン・フォンダがモデルかと思ったが、解説ではクリントン夫妻としている。そう言われればそんな感じがしないでもない。どこまでも優等生な感じの妻である。

滑稽なマフィアやら凄腕の殺し屋やらアル中の探偵やらが飛び入りして、相変わらずのドタバタハードボイルドが展開されるが、どうも今まで比べて薄味のような気もする。楽しいことは楽しいが、カットバックを多用したことで、主人公ニールの必然性が薄れたような気がするのだ。でもまぁ、久しぶりにシリーズが読めて楽しかった。












魔術師(イリュージョニスト)/ジェフリー・ディーヴァー

脊髄損傷で四肢麻痺の元鑑識捜査官リンカーン・ライム・シリーズの第五弾です。

今回の犯罪者は凄腕のマジシャン(イリュージョニスト)で、犯罪現場から消え失せたり、マジックに見立てた殺人を行ったりと捜査側を惑乱させます。有能なマジシャンが犯罪者になったら、かなりと恐いことになるだろうなぁと思わせました。

当初煙に巻かれていたライムですが、容疑者がマジシャンであることを見抜き、カーラという助言者を得て、徐々に真相に迫ろうとします(しかしなかなか迫れません(笑) )。カーラの人生も交錯させ、物語に厚みが出たように思います。

そこまでやるかというストーリーは目まぐるしく華麗に展開し、様々な伏線が一つに収斂します。誤導と伏線はマジックとミステリーの両方に共通しますから、ある意味、近縁の物とも言えるのかもしれません。

それにしても、ストーリーを紹介しようとすればネタばらしになってしまうと言う、実にやりにくいレビューになってしまいました(笑)。


↓amazon.co.jpへリンクしています。
魔術師 (イリュージョニスト)









ヘルズ・キッチン/ジェフリー・ディーヴァー

ジェフリー・ディーヴァーと言えば、脊髄損傷で四肢麻痺の天才鑑識捜査官リンカーン・ライムシリーズで有名だが、ロケーション・スカウトをなりわいとするジョン・ペラムを主人公にしたシリーズもある。

本作は「死を誘うロケ地」「ブラディ・リバー・ブルース」に続く三作目だ。二転三転するジェット・コースター・ミステリであるリンカーン・ライムシリーズと違って、ロケをする街で事件に巻き込まれるジョン・ペラムのシリーズは真っ当なハードボイルドだが、やはり意外な展開のディーヴァーらしさはある。

「ヘルズ・キッチン」は、お蔵入りになっていたシリーズに新たに付け加えられた最終編だそうで、ニューヨークのスラム街でドキュメンタリー映画を撮影していたライムが、アパートの放火事件に巻き込まれるというものだ。保険金詐欺の嫌疑を掛けられた老女を救おうと奔走するペラムだが、そこに放火魔の不気味さが加わって、娯楽味たっぷりの仕上がりである。老女とペラムの心の交流も切なく、さすがディーヴァーと思わせた。

作中でもよく言及されているのだが、映画の撮影場所を探して見知らぬ街を訪れ、事件を解決して去っていく姿は西部劇の正義の流れ者なのだろう。古き良き時代の西部劇のリリシズムが底流になっている。












ロックンロール・ウイドー/カール・ハイアセン

フロリダを舞台に、過激で善良な環境保護主義者と俗悪な開発業者との戦いをドタバタに描くミステリが得意な人ですが、今回は新聞記者がロックスターの不審死を追いかけるという、割りと一般的なミステリーでした。

出てくるキャラがブッ飛びなのは相変わらずで、主人公のジャック・ダガーは有名人の死亡年齢が気になってならない死亡欄担当記者ですし、その神経質さに耐えきれず出て行った元恋人の一人娘カーラとは仲良く付き合っていますが、この17才が恐るべき耳年増の事情通で、ジャックとのやりとりが笑わせてくれます。

子供の頃に別れた父親の死亡年齢が気になってならないジャックをいなし続ける母親や、仲良くなった老齢の元死亡欄記者とのラストシーンなど、ジーンとさせる場面もあって、やはり上手い!と思わせる作家です。

原題と訳題は全然違うものでしたが、こういうのはどうなんでしょうか。英語の本を翻訳した時に、訳題に別の英語を持ってくるケースはありがちですが、どうも違和感があります。

別の作品で、この本の訳者が「おお釈迦牟尼」と訳していたのを読んだことがありますが、「オー・マイガー」が原文なのか、それとも釈迦を使ったこの手の言葉があったのか、ちょっと疑問でした(笑)。


ロックンロール・ウイドー文春文庫



















サーチする:
Amazon.co.jp のロゴ









HOME