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青春・恋愛・ユーモア・その他現代小説2006




ドミノ/恩田陸    4TEEN/石田衣良    逃亡くそたわけ/絲山秋子
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ/滝本竜彦
下妻物語/嶽本野ばら    下妻物語・完/嶽本野ばら

マチルダ/ポール・ギャリコ    パッチワーク・プラネット/アン・タイラー



4TEEN/石田衣良
06/7/15

 

語り手のテツロー、頭が切れて皮肉屋のジュン、気の良い太っちょのダイ、富裕な両親を持ち、ウェルナー症候群(早老症)のナオトの4人を主人公に、彼らの身の回りで起こるやや異常な事件と、変わらない友情を描いた中学生小説。

この小説は大人が読書対象になっていると思われ、決してヤングアダルトではなかろうと思う。少しだけ気味の悪さを感じさせるあたりが、今時の中学生の特色をよく表しているのかもしれない。

以下は特に印象に残った三編。
「びっくりプレゼント」早老症のナオトが倒れて入院。三人が彼のために思いついた誕生日プレゼントは・・・。悲しさと優しさがない交ぜになった印象。
「月の草」クラスで八番目くらいに可愛いルミナ(ということはほとんど印象がない)が不登校になり、近くに住んでいると言うだけでテツローが教材類を届けさせられている。オートロック付きマンションの室内にあがれと言われ行ってみると、テーブルの上におやつが出されているがルミナの姿はなく、ドア一枚を隔てて携帯で会話することに。上手い設定だなぁ。
「空色の自転車」詳細は避けるが、あざといくらいに切なくて感動的な一編。


ほんの少しだけ不道徳で、でも誠実な、普通の中学生のたちの友情と日常を描き、気持の良い青春小説だった。










逃亡くそたわけ/絲山秋子

福岡の精神病院を逃げ出した男女が、九州を縦断するような逃避行を繰り広げる。芥川賞を受賞した著者の直木賞候補。

躁鬱病の主人公(女性・20才)は、強烈な副作用に襲われるテトロピンの服用が嫌さに、鬱病の治りかけ青年・なごやん(24才)を連れて入院中の病院を脱走する。「亜麻布20エレは上衣一着に相当する」という幻聴のリフレインが主人公の焦燥をよく表しているが、無意味な透奏低音であるこのフレーズは、資本論の一節なのだそうだ。

なごやんは東京言葉しか話さず、無駄な知識を鼻に掛け、東京者であることを標榜する見栄っ張りだが、両親が訪ねてきて図らずも名古屋出身であることを露呈する。標準語しか話さない、しかし名古屋銘菓「なごやん(パスコの製品らしい)」を自慢する彼の、故郷への愛憎が窺えて笑える。

なごやんのルーチェ(広島のメルセデス)で九州を南下する二人は、薬が切れかけていることもあって症状が悪化したり、死に傾斜していたりするが、苦難のドライブを続けることで何か吹っ切れ、不思議なハッピーエンドへ雪崩れ込む。

著者自身が精神を病んだ経験があるそうで、薬の詳細とか、発作の焦燥感とかに説得力があった。普通ならば逃走中の男女なのだから恋愛関係に陥りそうなものだが、ここにはそれがない。その辺も読後の気持ちよさかもしれない。








ドミノ/恩田陸
06/3/20

東京駅を舞台に、和菓子の老舗「どらや」の紙袋を取り違えたことから起こる騒動を描くスラップスティックなサスペンス。アイディアは映画「おかしなおかしな大追跡」だろうが、もっとシニカルだ。

爆弾を仕掛ける過激派、句友とのオフ会を楽しみにしている実直な老人、人気のスウィーツに執着するOL、一方的に別れたいプレーボーイ、何としても月末のノルマを達成して契約の書類を本社に届けたい保険会社、オーディションでバトルを繰り広げる子役親子など、実に多彩な登場人物がドタバタに参加する。

あらゆるトラブルを乗り越えて契約書類を時間に間に合わせる保険会社ご一行の行動は、「建売温泉住宅峡/かんべむさし」に収録されていた短編(タイトルは失念)がヒントになっていそうな気がするが・・・。

コミカルで滑稽で、一応大団円を見るのだが、単純なハッピーエンディングではないあたりが恩田陸だろうか。一部の間に、恩田作品は終わり方が中途半端で分かりにくいという評判があるが、分かるような気がする(笑)。

それにしても、SF、ファンタジー、ミステリー、ホラー、青春小説、スラップスティックと、実に多才な作家だなぁ・・・。








ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ/滝本竜彦
06/4/11

第五回角川学園小説大賞受賞作。

親の転勤で下宿屋で一人暮らしをしているやや自堕落な高校生・山本が、不死身のチェーンソー男と死闘を繰り広げる女子高生・雪絵に遭遇する。退屈に苛まれていた山本は戦う女子高生の姿に感動し、「共に戦う」と宣言するが戦力にはならない(笑)。せいぜい自転車で戦闘場所へ赴く時の運転手であるが、妙ちきりんなコンビの戦いは続くのである。

絶妙なナイフ投げの技を身につけている雪絵には、何故かチェーンソー男が出没する場所が分かり、「私が行かなければ無辜の人が被害に遭う」という使命感で戦っているが、この部分だけがスーパーナチュラルな要素であり、あとは普通に青春小説の感じだ。

山本にも雪絵にも心の傷があり、それが物語の核になっている。このあたりが単に切なく甘い青春小説ではない感じで、結構イタい。

ヘラヘラ高校生と真剣に戦う女子高生の対比が面白く、雪絵にまとわりつく山本の馬鹿さ加減も笑える。ある程度展開が読めてしまうがほどほどに面白かった。










下妻物語/嶽本野ばら
06/5/26

  「ヤンキーちゃんとロリータちゃん」という副題が付いている。映画化もされているし、有名な作品だろう。二人の高校生の交流を中心にした青春小説で、「だって、だって、仕方ないではありませんか」というようなお嬢様風の語り口が妙に気持ち悪良く(笑)、ギャグをまぶしたへんてこな青春小説が展開されていく。

主人公のロリータちゃん竜ヶ崎桃子にとって、ロリータはファッションではなく生き方である。エレガントなのに悪趣味で、ゴージャスなのにパンクでアナーキーなロココの精神を今に受け継いでいる訳だ。やくざの下請けでバッタもんを作っていた父親の尻に火が付き、祖母のいる下妻に引っ越してこなければならなかった桃子はあまりの田舎さにあきれ果てているが、それでもロリータを貫き通して生きている。頼りなげな外見とは裏腹に、享楽的なロココを見習う桃子はドライでクールなのだ(父親に愛想を尽かして家出した母親はエリートと再婚することになり、桃子を迎えに来るが、父親といる方が面白そうだからという理由で母に別れを告げた7才である)。

ロリータブランドを買う金欲しさに、父親のバッタもんを処分しようとした桃子の前に客として現れたのがヤンキーちゃん白百合イチゴで(「どーかなにゆえおねがいします」というイチゴのお手紙が笑える)、常に派手で下品なヤンキーファッションをまとっている。この二人、普通ではないところが似ていたりするのだろうか。ドライな桃子にとって友情など何の価値もないのだが、妙に気が合い、桃子の奇怪な体質でパチンコ屋荒らしをしたり、労働は嫌いな癖に刺繍に関しては天才的な桃子がその能力を発揮したブランドでイチゴがモデルになったり、行動を共にしている二人である。

友情など感じていないはずなのに、イチゴの危機に、乗れない原付で救助に赴く桃子が感動的。このでたらめなシーンの何と美しいことか。あり得ないような素っ頓狂な状況だし、作者からして倒錯したような男だからやや度外れているが、爽快で痛快な快作青春小説である。





以下はテレビで見た映画「下妻物語」について

ヒットしただけあって、確かに面白いことは面白い。ただ、何というのだろうか、原作のコミカルな部分だけを抽出してさらにコミカルな演出を施し、却って希釈されてしまったような感じがある。何故リュウジを一角獣にする必要があったのか。何故ヒミコ伝説に余計な付け足しをするのか。

ロリータちゃん桃子のファッションへの情熱や刺繍への愛、ヤンキーちゃんイチゴがいかにしてヤンキーになったか、桃子のダメ親父のダメさ加減、危機に陥ったイチゴを桃子が救出に向かうシーンのバカバカしさ極まる感動など、原作にあった濃密な空気が不足していて、その辺も不満足である。

イチゴが所属するレディース(表記が思い出せないが、画数の多い漢字で「ポニーテール」に当て字をしている(笑))のリーダーが族をあがることになり、世話になった彼女への思いを込めて、自慢の特攻服に「亜樹美さん ありがとう」の刺繍を入れて貰おうとするシーンがある。これを桃子が引き受けるのだが、デザインに凝りまくり根を詰めて入れた刺繍が映画ではショボイのである。背広を買うと入れてくれるネームと変わらず(笑)、これではアキミさんへのイチゴの思い、イチゴへの桃子の友情が伝わらない。

原作でのラストシーンは桃子&イチゴとレディース軍団との対決で、ここもバカバカしいくらいに熱く感動的なのだが、映画では桃子の独り舞台になっていて、これもなんだかなぁと思う。

この物足りなさは、或いはテレビ放映用の編集によるのかもしれず、本編をきちんと見ないで批判するのはいかがなものかもしれないとは思うのだが・・・。

めっけ物はヤンキーちゃんを演じた土屋アンナで、飛び切りの美少女なのに少ししゃがれてドスの利いた演技が実によい。ロリータファッションで暴れ回るシーンの堂に入っていること(笑)。深田恭子の方は、もうこれは彼女のためにある役としか思えない。富豪刑事と似通うキャラだが、最近の富豪刑事は小倉優子が入っているような気がする。








下妻物語・完/嶽本野ばら

強烈に痛快で面白かった青春小説の傑作「下妻物語  ヤンキーちゃんとロリータちゃん」の続編で、「ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件」という副題が付いている。あのすっとんきょうな二人の続編が読めるのは嬉しいが、何故殺人事件なのだろうか。

二人が東京へ行った帰りのバスに、ヤンキーイチゴの先輩亜樹美さん(引退したレディースのヘッド)が乗り合わせていて、夫の竜二が亡くなり、墓を建てるための里帰りだという。この車中で亜樹美の知り合いのヤクザが殺されるが、亜樹美さんには乗客の証言でアリバイがあり、最初に嘘を吐いてしまったイチゴが不利な状況に・・・、というミステリー仕立てである。

桃子の身勝手さ、根性の悪さには磨きがかかり、担当の刑事さえ翻弄されている。最初、ややもたつき感があったが、中盤からはギャグもからめて絶好調に飛ばして一気呵成の面白さ。

シブさ、義理、人情を信奉する、熱くてクサくてダサい走り屋男が登場するが、警備員で竜二のマブダチというセイジで、これがイチゴと意気投合して笑わせる。本格ミステリーマニアを自称するこの男は、自分が事件を解決すると力んでいるが、愛読書が三毛猫ホームズだというのが可愛い。

桃子へのお洋服への愛は前作と同じだが、BABY,THESTARS SHINE BRIGHTに就職して、本格的にアパレルの道へ進むことを決意する。パリコレを目指しましょうと磯部様に迫るのだ。東京へ旅立つ桃子の独白と、イチゴの餞別が切ない。

痛快な友情物語は新たな季節を迎え、それぞれの人生を歩み出そうとしている。この辺はとても心地よかったが、なぜ殺人事件なのだろうという疑問が尽きない。

 








マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険/ポール・ギャリコ

天才的ボクサーのカンガルーを巡る、愛すべき愚かな人間たちを綴ったコメディーである。

三流芸人をナイトクラブに斡旋している芸能エージェントのソロモン・ビムスタイン(ビミー)のもとに、マチルダという名のボクシングをするカンガルーを連れた元英国チャンピオンが現れる。芸人としてやとってくれという訳だ。田舎回りをするサーカスに、口八丁でマチルダを売りつけたビミーだが、マチルダが実はかなりの天才的なボクサーだったことが徐々に明らかになる。

そして、マフィアの後ろ盾を持つミドル級チャンピンのリー・ドカティが酔っぱらってサーカスのリングに上がり、マチルダに簡単にノックアウトされる。たまたまそれを見ていたのが辛辣で公正なスポーツコラムニストのデューク・パークハーストで、バークハーストが面白おかしく書き立ててマチルダこそチャンピオンだと主張したものだから、ドカティ側は再戦せざるを得なくなってくるのだった。

善良でボクシングが大好きなだけのカンガルーに、愚かな善人達の思惑が絡んで、コンゲーム小説のような味わいである。ハーシーのチョコレートをねだるマチルダが何とも言えず可愛いなぁ(笑)。

ビミーの婚約者ハンナは、ビミーが誠実かどうかが不安でたまらないのだが、みんな適度に誠実で適度に狡猾だったという感じか。マフィアの大物アンクル・ノノもいい味を出している。片や陽気なイタリア系移民のスポーツ好きエリート、片や冷酷なボスの二面性を持っていて、子分の前では陽気さは見せられないのである。そうして彼もマチルダの虜になってしまうのだ。

愚かで愛すべき人間たちと善良なカンガルーが織りなす、寓話めいたコメディーだった。

ポール・ギャリコという作家については、70年代くらいに若い女性に人気のあったファンタジー作家といううイメージだったが、元来がスポーツ記者だったということで、この手の世界はおなじみだったらしい。

リンク先のウィキペディアの記事で思い出したが、パニック映画の傑作「ポセイドン・アドベンチャー」の原作もこの人だった。テレビ放映された時に見たことがあるが、なかなかスリリングな映画だったと思う。あのようなスペクタクルな世界も描ける人なんだなぁ・・・。 http://ja.wikipedia.org/wiki/ポール・ギャリコ








パッチワーク・プラネット/アン・タイラー
06/7/23

気の良いフリーターを主人公にしたハートウォーミングな現代小説。

曾祖父が天使に出会って財産を築いて以来、財団を運営するゲイトリン家では代々の男が天使に出会って幸運を得ているが、一家の持て余し者バーナービーは未だ天使に出会っていない。

バーナビーはひとの秘密をのぞき見るのが好きで、高校生の時に家宅侵入を見つかった逮捕歴がある。更正施設のような私立学校に入れられ、卒業後に出会った魅力的な女性ナタリーと勢いで結婚するも14ヶ月で破綻、月一で娘との面会に通っている。面会の旅の途上、忘れ物を託された女性ソフィアに興味を抱き、パスポートと称されている忘れ物の中身を知りたくてうずうずするバーナビーは、女性を尾行し、娘との面会に遅れてしまうのだった。

老人相手の便利屋のような仕事についているバーナビーは、計画性がなくてだらしないが、人が良く誠実でもある。自分のことを信頼できる男だと思うのは誤解であると述懐しているが、経営者の女性(しわっぽい笑顔が魅力という説明がなかなか良い)からも、利用者からも、人気があるのだ。ソフィアが自分の天使ではないかと考えたバーナビーは偶然を装って近づき・・・。

物語にさほど大きなヤマはなく、ソフィアや娘や同僚マーティーンや顧客との関係が淡々と語られて、ユーモラスでハートウォーミングではある。ただ、ある読書メルマガで「何が何でも読みましょう」の評価を受けていたが、それほどのものかとも思う。アン・タイラーの作品の中でこれほど笑える小説もないというくだりも納得できない(爆笑するような要素はなかったのである)。面白くはあるが、まぁ、ワタシ的には星三つほどの評価だろうか。


















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