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Libro2009インデックス



フラミンゴの家/伊藤たかみ

 

離ればなれになっていた親娘が久しぶりに同居することになって生ずるさまざまな葛藤をユーモラスに描いた家族小説。

関西の地方都市のスナック経営者である片瀬正人は、6年前に別れた元妻(やり手のレストラン経営者)が手術を受けるため、疎遠になっていた娘晶をしばらく預かることになる。決して万能ではない父と、小生意気な12歳というパターンはいかにもありがちだが、主人公の元妻の思いやりもからんで余韻のある仕上がりだ。

正人の父親はパチンコ店経営者、母は元ホステスのスナック経営者という、堅気ではない家系であり、正人自身もヤンキー上がりである。このあたりを娘に軽蔑されたりするのだが、孫に対して濃い愛情を見せる母の女傑ぶりが笑える。

主人公の恋人あや子は、親友高井戸(風俗店経営)の妹で、同棲しているのを一時的に高井戸のもとに帰しているが、主人公に対してこの二人の情も濃い。三人ともヤンキーであり、現在のその気風を引きずっているのだが、さびれた商店街があってマンションからコイン精米機が見えるという関西の某市という舞台と妙に似合っているような気がする。

かつて正人は妻の共同経営者であり、「フラミンゴは餌によって赤くなる。餌次第で白から赤へ色を変えるフラミンゴのように臨機応変に生きるのだ」と宣言されていたことから「フラミンゴの家」というタイトルになるのだが、このタイトルには様々な意味が込められているように思える。かなりガラの悪い一家の家族愛の強さと重さがコミカルに語られた一冊。



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