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Libro2009インデックス




恋文の技術/森見登美彦

修士論文の研究のため、京都の大学の研究室から能登の実験所にやってきた守田一郎は、恋文の技術を磨くために文通武者修行と称してめったやたらと同時並行の文通をし始める。

相手は恋に悩むマシマロのごとき親友だったり、研究室を支配する女帝大塚緋紗子女史だったり、元家庭教師先の教え子だったり、黒髪の乙女に人気のある作家森見登美彦だったりで、内容の方はいつもの通りに自意識過剰でひねくれ者の青春のドタバタとした愚行なのだが、大塚女帝との死闘や、「乳」に取り憑かれた馬鹿者二人が「おっぱい万歳」と浮かれているところに憧れの君がはいって来てあわてふためく場面など、馬鹿馬鹿しくかつ微笑ましい(笑)。

主人公が直面する事件もそれぞれの文通相手と同時並行的に語られているが、よくもこれだけのシチュエーションを思いついたものだ。ひねくれ者の純情もほどよく、楽しく読了することが出来た。

大塚女帝と並んで出色なのは実験所の谷口さんである。昔の刑事ドラマの犯人役のようなジャンパーを着て、マンドリンを奏で、謎の腔腸動物を浮かべたコーラを涙を浮かべて飲んで勢力増強に努めているそうだ(笑)。



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