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Libro2009インデックス




ビールボーイズ/竹内真

 

室蘭郊外の新山市(架空の地名であろう)の悪ガキたちが、ビールを結束の絆として大人となっていく成長物語。

ガキ大将の正吉、参謀格の広治郎、弱虫だが人の好い勇は、父親の勤めるビール会社の都合で憧れの同級生茜が転校していったのを恨み、復讐と称して秘密基地でビール飲み大会(いわゆるビール祭)を開く。茜と仲の良かった男っぽい薫も参加して、変わらぬ友情の発端となるのである。

この後、修学旅行でのビール祭り、広治郎の両親が委託経営に成績を出せずに廃業し、放置されたペンション跡地でのビール祭(正吉の失恋が動機だが、肉欲におぼれる高校生はいかがなものか(笑))などを経て、正吉は地ビール作りを思い立つ。広治郎や薫のその後も重要なモチーフになっていて、この成長の過程が実に爽やかで心地よいが、名作「自転車少年記」とあまり変わるところがないのが惜しまれる。

お人好しでドジな勇は、実はかなりの勇気と思いやりの持ち主で、地ビール事業ではあまり大きな役はなさないが、喧嘩になりかけた正吉と広治郎の間を取り持つもの凄い放れ業を演じており、やはり凄い男なのだ。すべてが上手くかみ合った最終場面、ビールを片手にボロボロと泣く勇が愛おしいなぁ(笑)。

物語のモチベーションを担当するのは正吉、広治郎、薫だが、勇なくしては成りたたない、「さぶ(山本周五郎)」のような小説といえるのかもしれない。自分はアルコールは受け付けないが、ビールが本当に美味そうに思える小説だ。

 



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