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Libro2009インデックス




【新釈】走れメロス 他四篇/森見登美彦

近代日本文学の古典を独特のノリで翻案換骨奪胎した快作である。物語の登場人物は少しずつ重なり合うが、それぞれに独立した短編になっていて、作風もそれぞれに違う。「百物語」「桜の森の満開の下」のように幻想的でシリアスな作品もあるし、ギャグとドタバタと馬鹿馬鹿しさでは下記の「走れメロス」が一番笑える。

森見作品「夜は短し歩けよ乙女」にも登場している詭弁論部には、「詭弁論部に芽野と芹名あり」と勝手に豪語している二人組がいる。

学内の秘密組織図書館警察に部室を奪われた芽野は義憤に燃えて図書館警察長官を挑発し、長官が「学園祭の日に生楽団が奏でる「美しき青きドナウ」に乗ってブリーフ一丁で踊ったら部室を返してやる」という破廉恥な無理難題を吹きかけると、「大事な姉の結婚式があるので、親友の芹名を人質に置いていく、自分が明日の夕暮れまでに戻らなければ芹名をブリーフ一丁で踊らせれば良い」と約束する。

実は芽野には姉などいなくて約束を守るつもりはハナからなく、芹名の方も芽野が現れないことは承知の上で人質になると言う実に一風変わった友情の発露がテーマなのだが、これに怒った長官が何としても約束を守らせてくれようと次々に放つ刺客との追いつ追われつが笑わせてくれる。



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