HOME
Libro2009インデックス




 

吉原手引草/松井今朝子

言わずと知れた直木賞受賞作。吉原一の花魁葛城の起こしたスキャンダルを、吉原に携わる様々な人間に軽薄そうな若者が取材して回る聞き書きになっており、売れっ子の花魁の人間性や魅力と共に、事件の真実が徐々に浮かび上がるというなかなかミステリアスな構成である。

葛城の贔屓客の証言では、客あしらい良く、客によって違った顔を見せてそれぞれに良い思い出を残している花魁だし、遊郭の下働きや後輩遊女などからは面倒見と気っぷの良さが、また、凄絶で美しい夜叉の顔なども浮かびがって来る。それぞれの関係者が葛城の贔屓であり、何とはなしに某有名ミステリーを思い出させたが・・・。

多岐に亘る、吉原という魔窟に巣くう者(心中立ての指を新粉細工で作る指切り屋などという者まで登場する)たちの業の深さなども窺えて、ミステリアスで情緒たっぷりな時代小説である。





HOME