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Libro2009インデックス




 

紅はこべ/バロネス・オルツィ

「紅はこべ」が有名な歴史ロマン大作であり、安楽椅子探偵小説の名作「隅の老人」のバロネス・オルツィの作品であることは知っていたが、この手の歴史冒険ロマンが大好きな割りに何となく今まで手に取る機会もなく来てしまった。

昨年、集英社文庫の広告で見た「スカーレット・ピンパーネル」の作者名がオルツィだったので、これは多分「紅はこべ」だろうと見当を付け、これを機に読んでみようと思ったが、集英社文庫版は宝塚公演に便乗した抄訳らしいことが分かり、クラシックな創元社文庫版を読むことに。

フランス革命が進行するパリで、大勢の貴族が「自由・平等・博愛」の名の下に毎日のよう断頭台に送られていくが、彼らをイギリスに亡命させる「紅はこべ」と呼ばれる怪傑の活躍と、その正体への興味が物語の主軸である。

ヨーロッパ一の才媛と言われたマルグリート・サン・ジュストはイギリスの従男爵に嫁いだが、道楽者の夫を軽蔑し、退屈な結婚生活を送っている。彼女は共和主義者ではあったが、現在の革命執行部の強権・横暴ぶりに嫌悪を抱いており、密かに紅はこべに憧れていたりもする。しかし、革命政府の外交官(実は公安の親玉)ショーヴランに、愛する兄を種に脅迫され、図らずも紅はこべのあぶり出しに協力してしまうのだった。

この筋立ては、やはりマスクの快男児が活躍する「怪傑ゾロ」と同じで、一度は危機に陥りつつ、見事な活躍で敵の鼻をあかしてみせるのだろうとも想像が付くが、そこをいかに肉付けしていくかが作家の腕というものだろう。ハラハラドキドキ波瀾万丈の顛末である。ただ、ある程度見当が付くだけ、あまり斬新さは感じられなかった。

でも、アレクサンドル・デュマに代表されるような、この手の波瀾万丈・絢爛豪華な歴史冒険ロマンはやっぱりたまらないなぁ。

 




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