HOME
Libro2009インデックス




水の城 いまだ落城せず/風野真知雄

「のぼうの城/和田竜」同様、武州忍城の攻防を描いた時代小説である。「のぼうの城」の方が後発の作品であり、筋立て自体はこの作品とほとんど変わらない。かと言ってパクリというものでもなく、人間の描き方や駆け引きの濃密さでは「のぼう」の方が勝っているが、これは後出し作品の方が有利でもあろうし、たとえば娯楽文庫が通勤の友であるということを考えた場合、サクサクと読みやすいことが必須条件でもあったりするだろう。

ここでの成田長親は、のぼう同様飄々・茫洋とした好人物の中年男だが、のぼうまでの間抜けさも凄みもない。甲斐姫のじゃじゃ馬ぶりも似たようなものだが、「水の城」での方が更に桁外れだ(笑)。

取り立てて堅固に見えるわけでもないのに最後まで落ちなかった忍城と成田長親が一体のものとして描かれており、解説にもあるとおり、結局主人公は水の城自身であったようにも思われる。その化身として成田長親があるという感じだろうか。石田三成は最後に長親に恐怖しているが、水の城への恐怖でもあるのだろう。

先に「のぼう」を読んでしまったのでどうしても比較してしまうが、十分におもしろいと思える作品だった。







HOME