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Libro2009インデックス




 

脇役 慶次郎覚書/北原亞以子

隠居した同心が遭遇する事件やトラブルをユーモラスかつ暖かく描く慶次郎縁側日記シリーズの個性的な脇役たちに焦点を当てた連作集。とは言っても、いつものシリーズでも、必ずしも慶次郎が主役と言うわけでもなく、ほんの少し関わり合ったりするだけの作品もあるから、それほど大きく違うというわけでもない。

このシリーズの脇役では、何と言っても大根河岸の吉次のキャラが立っている。十手を預かる岡っ引きにも関わらず、探索の途中で知り得た秘密をネタにした強請で暮らしている、蝮とあだ名される男なのだが、ほんのわずかに純情な部分を残しており、時折それがクローズアップされてキャラに生彩を与えている。吉次は妹夫婦の営む蕎麦屋の二階に居候し、ごみためのような部屋で暮らしているのだが、妹が妊娠したことで自分がすげなくされるんじゃないかとやっかみ、拗ねてしまうあたりが可愛い(笑)。強請のけちくささをはかなんだり、蝮の吉次親分が何とも悩む一編である。

自害した慶次郎の娘三千代に代わり、三千代の婚約者晃之助と共に夫婦養子となった皐月の物語も良い。三千代の存在や、自分から望んだ立場にもかかわらず現状に悩む皐月の前に、似たような境遇のにわか押し込み女が現れ、そこからの展開で自分の存在に自信を持つようになっていく。

飯炊きで慶次郎の相棒佐七の若き日の友情物語や、元は若旦那であったらしい下っ引き(岡っ引きの助手)弥五の元許嫁の純情譚など、憂き目ばかりの世の中にも人の情が感じられて、しみじみと切ない。完璧なハッピーエンドばかりではないところがポイントで、ハッピーエンドだったらここまでの余韻は残らなかっただろうと思う。







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