HOME
Libro2009インデックス


SAKURA 六方面喪失課/山田正紀

地上げ屋が横行するバブル末期、足立区の綾瀬署に失踪課という部署が設けられた。失踪人を専門に扱う建前だが、警視庁内の役立たず警官の寄せ集めであり、陰では「喪失課」と呼ばれている。

古来、刑事ドラマでもはみ出し警官が痛快なな活躍をしてみせるというパターンがある。このダメ刑事たちは、アニメオタク、女好き、賭博中毒、不平屋、怠け者など、度を超してはみ出しているが、そこそこに有能ではあり、詰まらない事件を押しつけられては適当に解決している。

そしてその事件の陰に大きな陰謀が隠されていて、最後のクライマックス(壮大なドンパチ)に持ち込まれるのだが、ホウェンダニット、フーダニット、ハウダニット的な謎解き要素もあり、なかなか手の込んだ筋立てなのだった。

「この物語は虚構である。平たく言えばデタラメである。だか、この物語に登場する男たちが、しっかり、その手に握りしめている“虎の子”だけは虚構ではない。その“虎の子”を“正義”という。」という実に素敵な前書きがあるが、役立たずと見られていた人間が意外な活躍を見せるこの手のパターンは大好きだ。「考え抜かれたプロット、スピーディーな展開、浮き出たキャラクター」というB級作品の理想に近づきたかったと言うことだが、どうしてどうして、新宿鮫(大沢在昌)シリーズ並みに面白い、手に汗握る警察アクションである。

それにしても、30年ほど前に思索的な前衛SF「神狩り」でデビューした著者は、まったく作風の違う作品でも自在なものだが、思えば、秘境冒険小説やら、時代青春小説やら、さまざまな分野で傑作をものしてきた人だしなぁ・・・。



HOME