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Libro2009インデックス




チーム・バチスタの栄光/海堂尊

大学病院における連続不審死事件の謎解きを描く、言わずと知れた医療ミステリのベストセラーである。バチスタ手術(拡張型心筋症の肥大した部分を切除してしまう心臓手術の手法)の名手・桐生を中心にしたチーム内で術中死が続き、不審に思った桐生の申し出で極秘に調査が行われることになる。そして、白羽の矢の立ったのが窓際神経内科医・田口だった。複雑な院内政治や出世に興味を持たない、超越して飄々としたキャラクターに好感が持てるが、にわか探偵においそれと解決できる訳もなく、身勝手な屁理屈をまくし立ててひとを煙に巻くロジカルモンスター白鳥(厚生労働省技官)が田口の調査を元に謎を解いていく。

ロジカルモンスターの異名を取る割りに謎解き自体はさほどロジカルでもなく、それよりはやはりキャラの立った面々や、「白い巨塔」的怪奇複雑な院内政治や、詳細な医療場面のサスペンスなどを楽しむ小説であろう。白鳥には最初から様々な情報が与えられていて、作者は田口に対して不公平じゃないかと思ったりもするが、どちらも組織のはみ出し者で、しかしそれぞれ適当に優秀であり、妙に似た者であるところが笑わせた。田口に極秘調査を命じた高階病院長も相当に食えないオッサンで、このあたりの描写が何とも楽しい。収め方にやや不満足感もあるが、標準以上に面白かった。

白鳥の脂ぎった外見、外見よりは切れる頭脳、最終的には事件を解決してみせる手際は奥田英朗描くところのドクター伊良部を思わせるが、映像化ではどちらも阿部寛が演じているから、やはり共通性を見るのだろうか(笑)。

因みに、バチスタ手術を日本で初めて成功させた病院はわりあい近くにあり、時折受診することがある。本当のチーム・バチスタはここから始まったのかと思うと感慨深い。



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