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Libro2009インデックス




オババの森の木登り探偵/平野肇

この作家はまったく無知で、図書館の棚で、アウトドアなタイトルが気になったので引き抜いてみた。自然の中で子供が活躍するミステリーかと思ったが、そういう子供が大人になってからの物語だった。

東京目黒に奇跡的に残る森は子供の好奇心を惹きつけ、おっかないオババにおびえながらも侵入を繰り返す悪ガキたちがいた。そんな思い出を持つ中里翔平は、幼なじみの不動産屋に森の管理を頼まれ、仕事を辞めて住み込むことに。母屋は廃屋と化していて住めず、ツリーハウスに住み込んで町のトラブルシューターを始め、小さなトラブルから森の保護活動まで、様々な事態の解決に乗り出すのだが・・・。

森の中での暮らしというのが何とも魅力的で、頼りないながらも森の保護に懸命になる中里には好感が持てるし、やや謎めいた女性や、その生意気な娘など、森に集う人たちの交流、更にはその人脈が生きてくる終盤など、適当にサスペンスを盛り込んで、森の香りが漂ってくるようなアウトドアミステリーに仕上がっている。

ツリーハウスのくだりを読んだ時に、この設定は「誰も知らないちいさな国」の影響を受けているかもと思ったが、仲間と共に森を破壊から守ろうとする後半に至って確信になった。この作家はミュージシャンとの兼業だそうだが、十分に読ませる話だ。



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