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Libro2009インデックス


デジカメに1000万画素はいらない/たくきよしみつ

ミュージシャン、作家、デジタル方面のライターなど、多方面の活躍をする著者が朝日別冊BEに連載したコラムに加筆訂正したデジカメ本。デジタルカメラ業界をめぐる矛盾をユーザー本位で突いており、また、ガバサク流写真術を指南するなど、デジタルカメラユーザーとしては非常に参考になるテキストである。

著者は、以前よりメーカー間の高画素化競争を苦々しく考えて来ており、同じサイズの撮影素子を高画素で分割すれば、一画素あたりの受光量が減って階調が浅くなると訴え、数年前の500万画素のデジカメの写真の方が綺麗だと作例を示している。

著者の主張するガバサク流写真とは、ガバッと大きく撮って、デジタルはコストがかからないのだからガバガバたくさん撮って、サクっと直せば良いということである。

フィルムカメラの時代、特にポジフィルムは補正が効かないので、交換レンズやフィルターやストロボを使いこなし、自分のイメージにぴったり合う写真を作るのは大変難しかったようだが、それだけに挑戦のし甲斐もあり、失敗を繰り返すことで技術を高めることができたのだろうと思う。

しかるに、半永久的に使える記録メディアでコストは気にならず、補正もパソコン上で簡単に出来る時代なのだから、その特性をああだこうだ言わずに享受せよということか。昨今のデジイチユーザーでも、もしかしたら撮ったまま補正は一切しないことを誇る人がいるかもしれないが、そもそもコンピュータ上の画像はディスプレーが違えばまた別のように見えるはずで、趣味の領域もデジタルに時代に合わせて変化していくのかもしれない。

「ガバっと大きく撮る」は、昔から「望遠に頼らず対象に近寄って撮れ」と言われてきたのと同じことだろう。対象に迫る心がなければ良い写真は撮れないということでもあろうし、ズームよりも近くで撮ったほうがきれいな画像になるということでもあるらしい。実際、短焦点距離で近寄った画像はズームで寄った画像よりも画像が荒れずにきれいに写るような気がする。

ガバサク流写真術を駆使した撮影テクニック指南なども実用的で興味深く、デジタルカメラユーザーには有益なガイド本である。

本書は2008年の出版だが、2009年秋現在、高画素競争の先頭を走ってきたメーカーの初めての画素ダウンを英断として自分のサイトで称えている。でも、財界総理のところのメーカーだしなぁ・・・(笑)。

たくきよしみつにはデジタル方面の著書が多いが、地上波デジタルへの疑問や、二酸化炭素削減競争のまやかし、風力発電への懐疑など、時流に阿らない、正当な主張を持つ人で、エコ風潮に何となく胡散臭さを感じている自分としてはとても共感できるのだ。下記サイトなどもとても面白い。
http://takuki.com/
http://takuki.com/gabasaku/index.htm
http://takuki.cocolog-nifty.com/digicame/



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