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Libro2009インデックス


日本中世に何が起きたか 都市と宗教と「資本主義」/網野善彦

鋼鉄式日記のkotobukuさんがレビューされていたもの。

中世の非農耕・非定住の金融商工芸能宗教などに携わる人々の姿を掘り起こしてきた網野善彦だが、雑誌に寄稿したものや講演録などを編集し、網野史学を分かりやすくコンパクトにまとめた新書である。

天皇・神仏に直属することで聖なる存在であった供御人(くごにん)、供祭人(くさいにん)、神人(じにん)、寄人(よりうど)や、神仏の境内、泊、河原などの、境界(この世と異界の境界であろう)に市庭(いちば)が立つことで金や物はこの世と縁が切れて神聖なものになったことなど、中世ミーハーとしてはワクワクするようなテーマである。

しかし、鎌倉あたりを境に神聖さを剥奪されていく転換が起こったようで、これが江戸の農本主義へつながっていくようである。武家の政権が出来たことで鎌倉仏教はリアリズムであったし、何かを神聖視するということが希薄になってきたのだろうか。遊行の宗教者や遊女なども、聖別された存在であったものが白眼視される対象へと変わったようだ。

土地を所有し、農業民から徴税する領主と言うのが一般的な封建主義だろうが、元々百姓とは百の姓(かばね)であり、農本主義だけではなく重商主義(金融・運輸・工業など)も日本史の大きな要素だったというのが網野史学の主張である。ただ、この主張は、ミーハーをワクワクさせるだけあって、娼婦の聖性などは一部からはトンデモ扱いされている気配もある。



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