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Libro2009インデックス


 

沖縄独立を夢見た伝説の女傑 照屋敏子/高木凛

脚本家で沖縄料理店を営む著者が、シャンソン歌手の石井好子経由で知った沖縄の女傑・照屋敏子について取材し、その人生を辿ったノンフィクション。

照屋敏子はとにかくパワフルな女性である。両親が南米移民してしまったために預けられた祖母のもとで、9歳から魚の行商を始め(50kgからの荷物を頭に担いで糸満から那覇まで運んだそうだ)、長じては南洋諸島へ駆け落ちしてみたり、南方と行ったり来たりして私貿易を試みたりしている。

南方で邂逅した小学校時代の恩師と結婚、那覇の旧家に嫁ぐ。家財と共に福岡に疎開していた戦後、沖縄出身の引き揚げ者のために漁業団を組織し、自分が先頭になって海へ出て、糸満伝統の漁法で大漁を続ける。魚の買い取り価格が安すぎると、役所やマスコミを相手に派手なパフォーマンスをやらかして名を馳せ、女山田長政、女次郎長の異名を取る。一部の不満から糸満漁法が禁止され、失業しそうになると、マレーの実業家と手を組み漁業団として乗り込む。

これも失敗して、鰐皮のバッグ三つを持って帰ってくるが、それが商売になることに気づき、那覇で輸入雑貨の店を開業して大当たりを取ったそうだ。しかしこのままでは収まらない。沖縄の自立のためと思いこんで新規にマッシュルーム栽培やメロン栽培やウミガメ養殖などをもくろみ、事業を拡大しては失敗し続けるのである。愛憎の強い人で、事業をサポートしていた子供たちも逃げだす羽目に。先見の明を持ちながら、思いこみの激しさ故に成功しきれなかった人、という感じだろうか。

評論家の大宅壮一に評価され、おだてられた末に暴走してしまったのではないか、というのが著者の見方である。非常に魅力的な主人公ではあるが、石井好子から提供して貰った会話テープなど、既存の資料をなぞっただけのようにも思われ、著者独自の視点が見えなかったのが残念。



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