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Libro2009インデックス




   

わたしが幽霊だった時/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

幽霊となって彷徨う少女の自己発見を描いたファンタジーである。

自分が誰なのか、何故ここにいるのかあやふやなまま宙をさまよっていた10代の少女と思しき幽霊は、徐々に家のことや家族を思い出し、あちこち寄り道しながら我が家にたどり着く。両親は寄宿学校を経営していて、4人姉妹の1人であることが分かってきたが、この姉妹の我が儘で自分勝手で下品なありさまが延々と描写されてすさまじい。本当に児童向けファンタジーなのかと怪しむ(笑)。

親の方も教育者にあるまじき横暴かつ放置の虐待者っぽい感じだが、それ故にたくましく生きている姉妹だろうか。この理不尽な姉妹らが自分を殺したのかとか、いや、そうでもなさそうだとか、幽霊の困惑の度合いを増しながら徐々に物語は錯綜していく。何とも複雑な構成だ。

諧謔や善良さの陰にちょっとした悪意がほの見える人物たちが面白く、いかにもイギリス的重厚さだなぁと思う。一応のハッピーエンディングではあるものの、余韻を断ち切るような締めくくりまで、強烈な印象を残す。



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