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Libro2009インデックス


穴/ルイス・サッカー

4代前の先祖が豚を盗んだ罪によってかけられた呪いにより、まずい時にまずい場所に居合わせて不運を背負い込む運命となったイェールナッツ家の五代目スタンリー(太っちょの少年)は、先祖の前例通り、有名野球選手がチャリティーに寄付したスニーカーを盗んだという冤罪で矯正キャンプに送られる。

問題を起こした収容少年たちは、日がな一日直径・深さとも1.5mの穴を掘らされるのだが、冷酷な女所長や指導員の虐待に耐えかねたスタンリーは、ついに仲間のゼロと共にキャンプを脱走、この悪運から逃れられるか、というストーリーである。

導入部はカフカあたりの不条理を思わせるがどうだろうか。現在は砂漠と化しているグリーンレイクキャンプは、かつては緑あふれる豊饒の地であったが、悲恋の歴史を秘めて現在のような乾燥地帯になってしまったものらしい。先祖の呪いも含めて随所に伏線が張り巡らされ、ラストシーンに向かって終息する手際が見事。黒人少年ゼロとの友情も泣かせる。ラストのあたりはトム・ソーヤーの模倣に思えた。

アメリカのミステリーや映画では、刑務所所長が刑務所全体を私物化し、また、受刑者の間にも全国的な秘密結社的無法地帯が存在するなど、一種の無法地帯として描かれているものが多々登場するが、本作の矯正キャンプも私営のようで、支配者が私利私欲によって穴を掘らせているなど、同様の印象を受ける。不条理+刑務所もの+トム・ソーヤーな物語である(笑)。



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