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Libro2010インデックス




疾風ガール/誉田哲也

個性の強すぎるギタリスト少女・夏美と、迷惑なくらいの夏美の勢いに巻き込まれる周囲の人間たちを描いたバンド青春小説である。

ロックバンドでベースを弾いていた宮原祐司は現在は芸能プロ(巨乳タレント中心)のスカウトをしている。自分の才能に見切りを付けた宮原だが、ライブハウスでペルソナ・パラノイアのギタリスト夏美のオーラに圧倒され、付きまとってスカウトし続けることに。

ありがちな設定だとは思うが、傍若無人で柄が悪くて一本気な夏美が魅力的だ。あまりにも才能があふれているが故に、回りの人間を潰しかねない危うさを持っているところが新機軸か。

夏美は、薫(ホスト風の優男)のボーカルに惚れ込んでペルソナ・パラノイアに加入したが、ある日、薫が自殺してしまう。薫の身元は不明であり、何故薫が自ら世を去ったのか納得できない夏美は、嫌がる宮原をお供にして、自分探しならぬ薫探しの旅に出るのだった。

いろいろな事情が絡まり合って切ない結末だが、「下妻物語」的痛快さも感じられるバンド青春小説だ。

登場人物の面白さもこの小説の魅力だが、ペルソナ・パラノイアのベーシスト・ジンが一番キャラが立っている。猥褻なことしか頭にない女日照り男で、グラビアアイドルに精通し、恋愛絡みのスクープに心底腹を立てるのだが、いったん演奏にはいるともの凄いテクニシャンなのである。池田鉄洋あたりに演じて貰いたいものだ。夏美はどうしても土屋アンナが頭に思い浮かぶが、アンナちゃんではちょっと薹が立っているような気も・・・(笑)。その他、宮原の彼女とか、薫の同棲相手のキャバ嬢とか、出てくる女性がみな「いい女」だ。



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