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Libro2010インデックス




凸凹デイズ/山本幸久

弱小デザイン事務所を舞台にデザイナーたちの哀歓をコミカルに描いた、著者お得意のユーモアお仕事小説である。

ウラハラナミは、エロ本のレイアウト、スーパーのチラシ、包装紙などを手がけるデザイン事務所凹組(才能はあるのにうだつのあがらない二人の巨漢・大滝と黒川が運営している)に勤めているが、子供の頃から描いてきたキャラクターが遊園地「慈極園(じごくえん)」のリニューアルに採用され、人気事務所QQQに出向する形でリニューアル業務に携わることになる。

QQQの代表・醐宮純子は、10年ほど前に凹組の旗揚げに関わっていたが、広告賞に応募した作品を独り占めして独立した、凹組にとっては不倶戴天の女である。頭が切れて、行動力があって、大胆で、すれっからしで、仕事のためには女の魅力を使うことも辞さないが、ナミは多少の反発を覚えながらもゴミヤに敬意を覚えてついていくのだった。20年前のトレンディドラマだったら浅野温子が演じていたような感じのするゴミヤである。以前に関わっていた職場にこんな女性がいた。適度に美人で面白くて調子が良くて姐御肌で、しかしあまり誠実さが感じられなかったが・・・(笑)。

色々な行く立てがあってのエンディングは、出来すぎにしても幸福感があってよろしい。天才肌なのに臆病な黒川、黒川の良き相棒である大滝、上昇志向の強いゴミヤと、それぞれの書き分けは楽しく、未熟ながらも一生懸命なナミに好感が持てるし、父親が定年で家にいるようになったからとファミレスのウェイトレスを始めた母親のエピソードも素敵だ。こういう、ありきたりの人たちのちょっといい話を作るのが上手い作家だと思う。



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