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Libro2010インデックス




ちんぷんかん/畠中恵

大店長崎屋の病弱な若旦那と愉快な妖(あやかし)たちの活躍が楽しい時代ファンタジー「しゃばけシリーズ」の五冊目である。相変わらず一太郎は病弱で、火事の煙に巻かれて三途の川の淵まで出かけたりしている(笑)。

庶兄の縁談や、幼なじみで、菓子屋の跡取りなのに世にも不味い菓子しか作れない栄吉の修行など、ひとが段々去っていく寂しさを感じる一太郎の憂愁の巻、という感じだろうか。寂しさや焦りを感じるなら少しは元気になってみろと思うのだが、妖の力をもってしてもこれは無理なようだ。シリーズ物に付き物のマンネリ感をどう凌いでいくかが作家の力量なはずで、そのあたりをどう誤魔化していくのかが気になる。

人の形を取った桜の花びらの精・小紅の命の儚さを慈しむ一篇「はるがいくよ」の切なさとノスタルジーが良い。小紅の命の短さを悲しむ一太郎だが、これは長い時を生きる妖からみた人の命の短さの対比でもあるのだ。つくづく上手いと思う。

小鬼の鳴家(やなり)は相変わらず可愛らしいが、本人たちも自分の可愛さを意識しすぎていないか(笑)。 





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