HOME
Libro2010インデックス


美女と竹林/森見登美彦

竹林が好きだからという理由で大学院で竹について研究していた登美彦氏が、多角経営を夢見て職場の同僚女性の実家所有の荒れた竹林を整備し、己が成功者となる妄想をふくらませていくノンフィクション(?)。

エッセイと銘打たれてはいるが、まぁ、いつものドタバタ小説とさほど変わりはない。大方、7〜8割くらいは嘘八百であろうと思われるが、実家のご母堂手製「歯ごたえのあるケーキ」が笑わせてくれる(笑)。

相棒は司法試験受験勉強中の明石氏で、二人でまず枯れた竹を片づけるところから始めるが、かなり難行であり、成功への道は遠い。しかしどんなにくたびれようと、何となく楽しそうで幸福感がある。登美彦氏や明石氏がそれぞれ多忙になり、なかなか竹林へ行けないでいると、読者としては気が気ではないが、この幸福感には覚えがあるぞと思ったら、椎名誠「風にころがる映画もあった」「わしらは怪しい探検隊」や、宮原昭夫「さはら丸西へ(愉快な仲間たちがおんぼろ漁船で海の東海道五十三次をやらかそうという船旅爆笑旅行記」)など、大の大人がくだらないこと=無邪気な趣味に熱中しているようなエッセイを読んでいる時に出会うことを思い出した。何かとてもワクワクさせるのである。多忙な明石氏に代わって竹林整備の助っ人となった編集者諸氏も竹林の魅力に取り憑かれているが、最後のタケノコ刈りのシーンの、何と楽しそうなことよ。

ところで、登美彦氏は氏のブログで、竹林にて見つけたかぐや姫モドキと結婚したことを報告しているが、もしや竹林がらみの女性ではないかと思ったりしている。



HOME