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Libro2010インデックス




宵山万華鏡/森見登美彦

祇園祭の宵山を舞台にした連作的なファンタジー短編集で、登場人物や設定が少しずつ重なっている。

最初の一篇は、お調子者の姉(小4)と心配性の妹(小3)が宵山にまぎれ込んではぐれ、妹が赤い浴衣の可愛らしい子供たちに連れ去れそうになるというホラーな作品である。この世のすぐそばに闇や妖しさの異界があるという感じがいかにも京都らしい感じがして秀逸。子供の聖性と魔性の両方が描き出されている。

第二篇と第三篇は「宵山司令部に拉致され、宵山様にお仕置きされる観光客」というドッキリを、騙される側、騙す側からの両方から描いたもので、いつもの森見登美彦作品らしいドタバタぶりである。その後、第四篇、第五篇は再び不気味な味わいとなり、ユーモアとホラーを二つながらに味わえる快作だ。



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