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Libro2009インデックス




あだ惚れ 国芳一門浮世絵草紙2/河治和香

歌川国芳の娘である登鯉(とり=跳ねっ返りだが純情な江戸娘)を主人公に、江戸の風俗や切ない青春を活写する時代小説の第二弾(前作は侠風むすめ)。

経験もそれなりに踏んでいて、男女の道の奥深さを心得ている登鯉は、旗本の子息に惚れかけて悲しい思いをしたり(このゆくたてが良い)、スリといい仲になったり、相変わらず奔放な生き方をしているが、中途半端な青春に息が詰まりそうになってもいる。そういう切ない焦燥が生き生きと描かれているのがこのシリーズの魅力であある。国芳は相変わらずのんきで短気でお人好しで、家族や弟子に対する思いは熱く、濃く痛快な人情も読みどころ。

このシリーズは、葛飾北斎一家を描いた「さるすべり/杉浦日向子」の影響を受けていると思っていたが、なんと本作には年齢を重ねてなお現役の北斎と、(相変わらず)父親を鉄蔵呼ばわりしてはばからないいる五十歳になったお栄が登場し、相変わらずの憎まれ口を叩いている。火事好きのお栄はごみ溜の屋根で火事見物をしていて、そこに登鯉が合流する場面なんて、なんとも杉浦ファンへのサービスではないか(笑)。

男には惚れるものの真の男は現れず、絵でもそこそこ売れてはいるが女と言うことで芽が出ない、切ない登鯉の思いはどこへ向かうのか、今後の展開も楽しみだ。

   






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