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Libro,Musica,Planta DIARY(ほぼ読書日記?)


過去の日記


しばらくお休み致します。
06/8/31

サイトを開設して1年数ヶ月、
そろそろリフォームに取りかかろうかと思い、
1〜2箇月、日記の更新を休む事に致しました。

ブログとBBSの方はやっておりますので、 よろしければご贔屓に・・・m(_ _)m。








下妻物語・完/嶽本野ばら
06/8/28

強烈に痛快で面白かった青春小説の傑作「下妻物語  ヤンキーちゃんとロリータちゃん」の続編で、「ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件」という副題が付いている。あのすっとんきょうな二人の続編が読めるのは嬉しいが、何故殺人事件なのだろうか。

二人が東京へ行った帰りのバスに、ヤンキーイチゴの先輩亜樹美さん(引退したレディースのヘッド)が乗り合わせていて、夫の竜二が亡くなり、墓を建てるための里帰りだという。この車中で亜樹美の知り合いのヤクザが殺されるが、亜樹美さんには乗客の証言でアリバイがあり、最初に嘘を吐いてしまったイチゴが不利な状況に・・・、というミステリー仕立てである。

桃子の身勝手さ、根性の悪さには磨きがかかり、担当の刑事さえ翻弄されている。最初、ややもたつき感があったが、中盤からはギャグもからめて絶好調に飛ばして一気呵成の面白さ。

シブさ、義理、人情を信奉する、熱くてクサくてダサい走り屋男が登場するが、警備員で竜二のマブダチというセイジで、これがイチゴと意気投合して笑わせる。本格ミステリーマニアを自称するこの男は、自分が事件を解決すると力んでいるが、愛読書が三毛猫ホームズだというのが可愛い。

桃子へのお洋服への愛は前作と同じだが、BABY,THESTARS SHINE BRIGHTに就職して、本格的にアパレルの道へ進むことを決意する。パリコレを目指しましょうと磯部様に迫るのだ。東京へ旅立つ桃子の独白と、イチゴの餞別が切ない。

痛快な友情物語は新たな季節を迎え、それぞれの人生を歩み出そうとしている。この辺はとても心地よかったが、なぜ殺人事件なのだろうという疑問が尽きない。

 








樓岸夢一定(ろうのきしゆめいちじょう)/佐藤雅美
06/8/24

秀吉麾下の部将として精励した蜂須賀小六を主人公に、戦国の国盗りを描いた歴史長編。

木曽川流域の川筋者を束ねる蜂須賀党の魁首小六はいわゆる土豪で、美濃と尾張が争う間で、運輸、諜報、攪乱などの戦場稼ぎをしており、父親が斎藤道三と縁があることもああって美濃に肩入れてしてきたが、織田信秀、その後を継いだ信長の力が大きくなるに連れ、どっちつかずの態度が許されなくなってきている。地縁で幾度か助けたことのある信長に対しては、その傲慢さや狂気に対して含むものがあって臣従する気にはなれず、働きが報われないで何度も煮え湯を飲まされてきた。

小六が世話になっている村の分限者生駒八右衛門の妹が信長の愛妾になっており、生駒家の使いっ走りをしていた木下藤吉郎はその縁で信長に抱えられ、出世し始めている。かつては小六が呼び捨てにしていた藤吉郎だが、信長に仕える気にはなれず、藤吉郎をこそと見込み臣従し、その後、秀吉を上に押し上げるために、幾たびも戦場働きで汗を掻くことになる。

一応は名家の末端であった信長に対し、小六は現場の叩き上げである。外交や調略で力を発揮したのも、その誠実な人柄故だったという設定になっているが、平気でひとを裏切り、出世の捨て石にする秀吉・信長と対比し、その特質が際だっているように思える。無頼風来の徒として無意の日々を送っていた前野小右衛門との友情も終生変わらず、その辺の描き様が心地よい。










獄窓記/山本譲司
06/8/22

秘書給与流用詐欺で逮捕された元国会議員が、己の犯罪の来し方と、障害者の世話係を命じられた獄中の日々を綴ったノンフィクション。障害者の収監問題にも一石を投じて話題になった本だ。

妙に漢語を多用した文章は自己陶酔的だし、一方的な記述だから偏りがあるような気もするが、学歴も経歴もある受刑者の生活はそれだけで興味深い。妻と生まれたばかりの子供を残しての収監だから、哀れさはこの上ない。

多少の後ろめたさを覚えつつも事務所経費のために秘書給与を流用し、それがマスコミに明らかになったのは、この一件を持ちかけてきた人間(私設秘書)のたれ込みによるものだったらしい。長年の慣習だからと甘く考えていたようだが、昨今の、ライブドアや村上ファンドや談合の摘発などを見ると、ルール破りは通用しないご時世になってきているような気がする。

逮捕前に議員辞職しているし、本人も弁護士も執行猶予のつもりでいたようだが、意外にも1年半の懲役刑。控訴審で戦うよりも、早いうちに罪を償っておこうと考えた著者は、違う世界を覗いていみるのも一興という好奇心もあったようだが、犯罪者へのペナルティは出所後にもついて回ると言うことで、決して甘いものではなかったようだ。

反近代的で人権無視の獄中生活は、読むだに気分が重苦しくなる。そもそも監獄法という明治に制定された法律が囚人生活の根拠になっていて、時代錯誤も甚だしいらしいが、人権を剥奪されるからこその刑罰でもあるのだろう。

福祉を政治活動のライフワークにしていた著者は、囚人達の相談にも乗ったりしていて、やがて寮内工場と呼ばれる、障害者を集めた工場の指導補助に配属される。精神障害、知的障害、身体障害、認知症などがあり、普通の懲役刑を受けられない囚人たちの世話係をやらされるのである。汚物の処理や食事の世話や清掃まで、ホームヘルパーのような生活だったらしい。

指導補助仲間に、有名な患者虐待事件で逮捕された人間がいたようで、障害者への差別的言辞を平気で口にしながら汚物の処理など率先して体を動かしていたりするらしいから、人間はやはり複雑である。

この経験を生かし、昨今は障害者福祉の世界に生きているらしいから、人間は幾つになってもやり直せるものだと思う。同じ罪で摘発されながら、著者を引き合いに出して「カツラを買うなどの私的流用はしていない。」と事実誤認の弁解をしていた辻元清美に対し、法的措置も辞さないと憤り、彼女の人権意識の薄さを露呈したと激しく糾弾しているが、執行猶予でいけしゃあしゃあと政治家に返り咲いているのを見ると、やはり人間の底が浅いなと思う。


それにしても、獄中記というのはどうも癖になるようで、5冊ほども読んでいるだろうか。普通の人の目には明らかにならない閉鎖的な世界の、特異な経験を経てきた人間たちばかりなのだから、興味深いことはこの上ないが、そう言っては失礼か。


刑務所の王/井口俊英
大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件で服役した著者が、拘置所内で知り合った伝説の犯罪者について記した評伝。ふとしたことで人生を誤って収監された後、全国の刑務所内に張り巡らされた秘密結社の権力者となっていく主人公が痛快。


LONESOME隼人/郷隼人
アメリカで犯罪を犯し、終身刑を受けている懲役囚の歌文集。
この人は朝日歌壇の常連で、短歌を時折目にするが、刑務所暮らしの悲哀や事件や望郷の思いを壮絶な諧謔と抒情で綴っって印象的である。

大坂朝日に連載されたエッセイが併録されているが、猫や小鳥など動物との交流、刑務所の庭に咲く野の花、ルームメートとなった囚友、日本食を差し入れてくれた親切な看守、刑務所暮らしのコツ、白米を炊いてしまう発明、食事に出たトマトから種を採り育ててしまった話など、身近な事物を情緒たっぷりに描ける筆力は大したものだと思い。これだけの文章を書ける人が何故重罪を犯したのか・・・。

短歌は下記のウェブサイトでご覧になれます。
http://www.mt-non.cside.com/hayato/index.html


囚人同盟/ビル・リーマン
こちらは獄中ピカレスクロマン。この著者も終身刑の受刑者らしい。一人の風変わりな囚人によって獄内の雰囲気が変わり始め、ついに不正をしている刑務所長を追い詰めていくという痛快な物語。


塀の中の懲りない面々/安倍譲二
ベストセラーになったユーモア獄中エッセイ。この人、デビュー当時は特異な経歴が面白く、同じような内容の著作を何冊も出していたが、ネタが切れたのか、後が続かなくなったような。


同じように極道作家の異名を取る浅田次郎は、「極道放浪記」「勇気凛々ルリの色」などの爆笑犯罪スレスレエッセイも面白かったが、創作ができるのが強みなのだろうなぁ。何度かの逮捕歴はあるものの、釈放されたり無罪判決だったりで、ついに刑務所入りはなかったそうだ。傍目から見ると箔が付きそうな気がするが、入らないにこしたことはないそうで・・・。








三日月が円くなるまで/宇江佐真理
06/8/19

東北の大藩であった仙石家は、戦国のどさくさに家臣島北に独立されて藩領の肥沃な土地を奪われ、江戸の現在に至るも角逐を繰り返しているが、一橋家の賄賂の要求を断ったところを島北が横取りして面目を潰された上に、島北が版図を拡大しようとしている気配が伝わってきて、藩主は病の床に就いてしまう。義憤に駆られた在郷藩士の子息・正木正左右衛門が島北藩主の首級を挙げると飛び出すや藩内は喝采し、藩の重役である刑部秀之進は子息小十郎にこのサポートを命じるのだった。

主人公小十郎は、人は好いながら堪え性がなく、学問も剣も凡庸である。父親の命に従い、父親の懇意にしている町屋に落ち着くが、武家のプライドやしがらみや家というものに疑問を覚えている。それほどにして守るものかと思っているのだ。家主の娘ゆたとの交情が情緒豊かに描かれ、恐らくこのまま町人になって夫婦になるのだろうなぁと思わせるが、そう都合良くは展開しない。

人間として凡庸な小十郎を、父親は最初から使い捨てにするつもりだった節があり、藩や父のあまりの理不尽さに怒りを覚える小十郎だが、思い切って致仕することも出来ない。小十郎の家主・八右衛門も、かつては長崎奉行に下役で、上司の言うままに抜け荷に加担して追放された身なのだが、お勤め上の理不尽にさらされながら生きなければならない姿は、やはりサラリーマン社会を映しているのだろう。談合と天下りのバーターを代々引き継いできた官僚が、透明性や情報公開や規制緩和の現代では問題とされて逮捕される姿に重なってしまう。

物語の序盤で、小十郎は雲水・賢龍と知り合い友誼を結んでいるが、何かと賢龍を頼りにしていて、危機に陥るたびに「俺を見捨てるのか」と叫ぶのが情けなくて微笑ましかったりする。

在家信者のふりをする必要があり、賢龍が世話になっている寺で座禅の修行をしていて、ここで禅寺のしきたり通りに古参僧侶にいじめられ、多少は人変わりしてたくましくなったかなぁと思わせるが、それがそうでもない。どうも全てがこの調子で、物語の進行も、人間の機微の描き方も中途半端な感じがする。妙に行間がスカスカしているのも物足りなさを思わせるが、こういうのは編集側の意図だろうか。面白くはあるが、軽すぎてすっきりしない長編だった。








ヨメナ語夏の実力テスト
06/8/16

ほぼ日刊イトイ新聞で楽しみにしている「ほぼ日式声に出して読めない日本語」コーナーで、ヨメナ語夏の実力テストをやっています。

三日分チャレンジして、90点・70点・90点でした。どうも流行り物の固有名詞には弱いです(汗)。

漢字好きの方はチャレンジなさってみてはいかがでしょうか。








フラッシュ/カール・ハイアセン
06/8/15

フロリダの豊かな自然を愛し、環境を守るためなら非常識で過激な行動も辞さない善人と、俗悪な観光業者・開発業者とのトラブルをテーマにスラップスティックなミステリーを書き続けるカール・ハイアセンの、「HOOT」に続くヤングアダルトノベル。海水浴場に汚物を垂れ流しているギャンブル船に腹を立て、沈めてしまった罪で逮捕された父親の汚名を晴らさんと奮闘努力するノア少年の活躍を描いている。

ノアの父親は、不正、環境汚染など、自分にとって許せないことには我慢が出来ず、過激な行動に奔る性癖があり、それ故に船長免許を取り上げられている。母親はごく常識的で、あまりにも桁外れな父親に愛想を尽かしかけており、離婚の「リ」の字なども持ち出されてやきもきする子供たちなのである。このあたり、「サウスバウンド/奥田英朗」の父親を思わせるが、あそこまで強烈ではなく、また強くもない。繊細で優しい父親でもあるのだ。

ギャンブル船のオーナーは当局と癒着しており、なんやかやと言い逃れを繰り返して、父親の先走りだけが笑い者になっている。ノア少年は、闘志の固まりのような妹と共に策を練り、この事実を証明しようと奮闘するのだった。

この二人の頼もしい助っ人になっているのが謎の老人で、タフで精悍で正義漢のところはクロコダイル・ダンディーのようだ。裏の世界で生きてきたようだが、漫画のような活劇人生を送っており、何ともかっこよい。

ノア少年は特に強くもないし、ギャンブル船オーナーの馬鹿息子に付け狙われたりしているが、自然を守る心と、名誉を重んじる誇りと、あえて苦難に立ち向かう少しの勇気を持っていて好感が持てる。この辺はハイアセンの大人向けドタバタミステリー作品と同じ構造だ。やきもきさせてカタルシスが待っているという、実に上手い物語作りだと思う。










残暑お見舞い申し上げます
06/8/13

昨日は雷雨でかなり涼しくなりましたが、本日も、暑いながらもわりあいからっとした空気で楽に過ごせました。 挿し木の鉢上げやら庭の片づけやら、外の作業をしなければならないのに、結局本を読んで過ごしてしまった怠惰な日々・・・(汗)。

ネット上のフリー百科事典ウィキペディアで著作権切れのため自由に使えると配布していたムクゲの植物図譜画像を修正して、残暑お見舞いを作ってみました。アオイ科偏愛者にとってはなんて素敵なプレゼントでしょうか!。

現在は趣味として愛好家が多いボタニカルアート(植物画)は、恐らくこういう図鑑用の植物図譜から発展したものなのでしょう。写実性を大事にしつつ美しさも盛り込まれて、なかなか奥が深そうです。











いただけないなぁ・・・。
06/8/11

最近、テレビ・雑誌などのマスコミで気になるのが、「食べる」の意味で使う「頂く」である。謙譲語であり、自分だけに使う言葉であるはずなのに、旅番組のナレーションで「美味しく頂けます」「(○○さんは)〜を頂きます」などと言うのである。違和感があるったらありゃしない。

こういうのは浅はかな放送業界だけかと思っていたが、翻訳ミステリーでも三人称の文体で「頂く」を使っていた。こうなると用法の転換が起こっているとしか思えない。このまま誤用が定着していくとしたら気持ち悪いなぁ。まったく頂けない話だ。(←ベタですみませんm(_ _)m)








柳生雨月抄/荒山徹
06/8/10

 

霊能があり、さらに宗家柳生宗矩を凌ぐほどの腕前でもある、京都の陰陽師家に養子に入った柳生友景を主人公に、朝鮮の妖術師との戦いをおどろおどろしく描いた時代伝奇である。友景は以前にも登場しているが、その時には十代で美貌でサイキックで剣の達人であり、時代伝奇の主人公にぴったりだと思ったものだ。今作では成長して男盛りになっている。

別の荒山作品で、朝鮮の妖術師が崇徳院の霊を呼び覚まして日本に災厄をもたらそうとしたことがあるが、その時に立ち会っていたのが友景である。「われ日本の大魔縁たらん」と欲した崇徳院だが、愛国心に目覚めのたのか、今作では再びの朝鮮の侵略を察知し、これを防がんとして友景を使おうとしているのである(笑)。このあたりのグロテスクなユーモアは、西村寿行の後期バイオレンス小説を思わせる。

朝鮮の妖術師は光海君の側近でもあり、庶腹で立場の弱かった光海君を押し上げた功労者でもある。日本への侵略を企み、さまざまな悪辣な手を打ってくるコンビは、「影武者 徳川家康/隆慶一郎」の秀忠・柳生宗矩コンビを意識しているに違いない(笑)。そういえば、隆慶(ユンギョン)先生という端役が登場したが、あまりと言えばあまりな扱いよう・・・(汗)。

徳川にたてつくことを貫いた淀君も、関ヶ原で豊臣を裏切った小早川金吾も、本田正純の宇都宮釣り天井も、徳川を潰して日本の戦乱状態を継続させようとする朝鮮側の策略として描かれているが、友景はこれを丹念に潰していく。驕慢だが賢明な女傑・淀君の、子供への思いが切なく描かれ、この辺は上手いと思う。

柳生一族で朝鮮に渡った久三郎純厳の妻子が柳生新陰流の使い手となっており、朝鮮側謀略の手先に使われているというのがこの小説のポイント。友景は朝鮮に乗り込み、霊能力も駆使しながら最後の対決に雪崩れ込んでいく。

難点は幾つも数えられる。古代日本を中心にした地理・歴史観は右翼的で辟易するし、プライドと劣等感がない交ぜになって日本を侮蔑する朝鮮側の描き方も短絡的である。霊的諜報網、霊力発信基地、霊的枢軸同盟などという言葉遣いは、安手のオカルトSFみたいでいただけない。「恨(ハン)の流れ」でハンリュウ、男装の剣士「呉叔鞨」「安兜冽」、蛾の化け物で「慕叔蠡」などというお遊びもいかがなものだろう(読みは想像して下さい(笑))。却って興趣を削いでいるような気がする。

戦国・江戸初期の日朝のしがらみを軸に、おどろおどろしい妖術対決を織り込んだ伝奇が得意の著者だが、正直なところ「魔岩伝説」「十兵衛両断」のように、物語の核になる大がかりなネタがなく、日朝の妖術対決だけでは弱いかなと思う。それでも、血縁の柳生剣士二人(どちらも美貌(笑))による対決の迫力と美しさがそれを補っていた。










獄中記 地獄篇/ジェフリー・アーチャー
06/8/8

どうでもいいような微罪なのに、(本人の言うところによれば)判事の悪意によって二年間の獄中生活を余儀なくされた著者が、収監された初日からを詳細に綴った獄中日記。さすが、転んでもただでは起きない(笑)。終始一貫して自分は嵌められたのだと主張し、家族への愛情と感謝を縷々綴っているのは、ややいい子ちゃんかなという気もする。大体、売春婦とのスキャンダルが問題になった人なのだし・・・。

他の受刑者たちについて語っているのが興味深いが、受刑者というのは、特異な閉鎖空間における特異な人々なのだから興味深くて当たり前だとも思う。

蛍光灯から電力を取り出す特殊な技術を語る奴、
事業に成功してはそれを手放し、忙しさのために離婚する羽目になった男は、恋人が大麻の売人一家の一員だったため、ついファミリービジネスを手助けして逮捕された事情、
リスナーと呼ばれる世話役模範囚がさらされてきた虐待の過酷な経験、
きちんとした教育を受けていれば能力を発揮できるような優秀な受刑者、

などが手練れの筆致で綴られている。微罪なのに重罪犯と一緒にぶちこまれた普通人への義憤はいかにも政治家らしい。

全体をダンテの神曲になぞらえてこの次は煉獄篇があるらしく、これも読みたいものだ。








暑中お見舞い申し上げます
06/8/6

暑中見舞い


明日から立秋なのだそうで、ギリギリの暑中お見舞いでございます(汗)。



高校野球が始まった。野球という競技にはあまり興味がなく、普段ならば見るはずもないのだが、「日曜美術館」も「題名のない音楽会」も開会式の中継で潰れるとあっては他に見るものもなく、致し方なく眺めていた。
もしかしたら初めて見る高校野球開会式かもしれない(そんなはずはない?)。開始のファンファーレは、きれいなハーモニーだと思っていたが、終わり寸前に音がずっこけて残念(笑)。

驚いたのは国歌斉唱と国旗掲揚があったことだ。公立校の国歌・国旗に反発している朝日新聞の主催なのに。高校野球だって(建前上は)教育の一環なのだから、これについては看過しているのがちょと解せない。主張に一貫性がないぞ!(笑)。

それにしても「栄冠は君に輝く」は名曲だなぁ。清々しくて勇壮で、非常に気持の良い曲だ。高校野球に興味なけれど、この歌が流れてくると妙に楽しい。








花はさくら木/辻原登
06/8/5

朝日夕刊に連載されていた時代小説である。

時の老中田沼意次は、江戸に大坂に負けないような経済機能を持たせたいと考えている。そして、朝廷に莫大な献金をし、鴻池とタッグを組んで巨利を得ている豪商北風組を潰そうと画策し、配下を送り込むのである。

北風は反幕の旗印として淀君の血を引く菊姫を拉致し、己の娘として養育しているが、菊姫は智子内親王(後の後桜町天皇)の親友でもある。そして、皇太后と田沼の思惑が一致して北風を追い落とそうとする暗闘の幕が開く。

田沼配下の薬込役(御庭番)の青年・青井が菊姫と恋に落ち、ロミオとジュリエット思わせるかと思うと、智子内親王がお忍びで大坂へ遊びに出かけたりして、このあたりは「ローマの休日」である。ちょっとした映画的お遊びであろう。

ここでの田沼は有能で清爽な壮年の男として描かれており、現代の切れ者ビジネスマンという感じでもあろうか。部下思いのところも現代的で、青井への思いなどちょっとホロリとさせる。

終盤、荒唐無稽な展開になり、着想は面白いながら全体に冗漫に流れていった感は否めない。読後の不満足感はどこから来るのかと問えば、恐らく題材を詰め込み過ぎて消化不良になっているのだろうと思う。



同じ作者による「翔べ麒麟」は、唐の都に派遣された貴族青年の「三銃士/デュマばりの活躍を描いたもので、大変に面白い歴史青春小説である。こちらは文句なくおすすめだ。










七姫幻想/森谷明子
06/8/2

古代、平安朝あたりを舞台に、男女の愛憎と謎をからめた、王朝ミステリーロマンと言うところか。そこそこ面白くはあるが、どうも男女のドロドロやインセストタブーなどが鬱陶しい。

うだつの上がらない中年男・清原元輔(清少納言の父親?)が出会った、秘密めいた一族の出の夏野や、夏野が被害者となった殺人事件、夏野の姪による復讐を、ホラーと耽美と哀調で描いた「薫物合」はわりあい良かったように思うが、どうも王朝と謎解きはあまり合わないように思う。雅な雰囲気が台無しになるからだろうか。

男女のドロドロが平気(お好き?)な方には喜ばれる一冊かもしれない(笑)。








題名のない音楽会
06/8/1

一昨日の「題名のない音楽会」は、「ヌーヴォー対ヴィンテージ」と題して、ジャズクラリネットの名手・北村英治、東京藝術大学でクラリネットを教える村井祐児、ジャズピアノの松永貴志という豪華なメンバーが、ジャズとクラシックの饗宴を繰り広げた。

北村英治のふくよかなクラリネットはやはり良い。77才という年齢を感じさせない軽やかさで、何ともウキウキとなる演奏だ。村井祐児には25年前からクラシックのクラリネットを習っているそうで、この二人の掛け合いも楽しかった。クラシックでは使わないビブラートが村井氏にはできないのである(笑)。ジャズとクラシックにまたがる管楽器は数多いが、表情豊かな演奏は、クラシック的には邪道になるのだろうなぁ。

北村英治と松永貴志は、まるでお祖父ちゃんと孫という感じで微笑ましい。ジャズの世界の新鋭が可愛いのだろう。

このメンバーに司会の羽田健太郎を加えたラストの「ラプソディ・イン・ブルー/ガーシュイン」が圧巻。元々好きな曲だが、豪華な演奏が楽しかった。


更新 トップを変えてみました。いつものようにArt−Flashからお借りしたものです。風力発電の羽と空の画像ですが、何となくジブリっぽいと自分では思っています。











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