一時期、小説類に心が動かず、エッセイやノンフィクションばかり読んでいたことがあります。 深刻な問題を扱った小説が面倒くさかったというか・・・。一種の逃避かもしれません。 最近は「花も実もある絵空事(誰だったか、昔の文豪の金言です)」である小説に回帰しておりますが(笑)。
30代半ば過ぎから歴史に興味を持つようになりました。過去を振り返る年齢なんでしょうか。昔のことが妙に楽しかったり致しますが、 特に庶民の歴史に興味が向いています。
実作はしませんが、俳句や短歌も興味があるので、こちら方面も少し採り上げました。
作 家 名 | 作 品 名 | 備 考 |
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赤坂 憲雄 | 東西/南北考 | 日本の正史とは、弥生期以降の本州・四国・九州の歴史、すなわち東西の視点に過ぎないとし、 北海道・沖縄の縄文文化を含めた南北の視点を導入すべしと説く。気鋭の民俗学者の歴史観がスリリングです。 |
吾妻ひでお | 失踪日記 | カルトな人気を誇る漫画家が、仕事に行き詰まって失踪し、ホームレス生活を送った日々を綴った実録コミックで、コミカルかつ不条理な持ち味が相変わらずです(笑)。 |
尾辻 克彦 | カメラがほしい | カメラマニアの著者の楽しいカメラエッセイ。カメラウィルスに感染すると、コレクション病が始まってしまうようです(笑)。「ライカ同盟」という実名小説もあり。 |
阿川 弘之 | 南蛮阿房列車 | 内田百閧フ阿房列車シリーズにあやかった海外鉄道紀行。 |
浅田 次郎 | 極道放浪記 | 極道作家で知られる著者の来し方を綴った爆笑エッセイ。「極道」はネタかと思っていたのですが、本格的に悪い人だったような…(笑)。 |
足立 倫行 | 北里大学病院24時 | 現在のような「患者本位の医療」が当たり前になる以前から取り組んでいた北里大学病院のルポ。 |
新井 素子 吾妻ひでを | ひでをと素子の愛の交換日記 | 人気SF作家とカルトな漫画家による、エッセイと漫画の楽しいコラボレーション。 |
井口 俊英 | 刑務所の王 | 大和銀行巨額損失事件で服役した著者が拘置所内で知り合った、伝説の犯罪者の評伝。ふとしたことで人生を誤って収監された後、刑務所内の権力者となっていく主人公が痛快です。 |
池波 正太郎 | 食卓の情景 | 時代小説の大家はグルメでもありましたが、文士グルメにありがちな気取りやいやらしさがなく、懐かしい味を語り、ところの名物を語り、滋味溢れる食味エッセイになっています。 |
板津 安彦 | 与力・同心・十手捕縄 | 江戸刑事博物保存会メンバーの医師による肩のこらない歴史読み物で、捕り縄についてが詳細です。解けてはならず、血行障害などを起こしてはならず、しかも見た目が美しくなければいけないという、 なかなか奧の深い世界のようでした。 |
五木 寛之 | 日本人のこころ | 現代日本が忘れてしまった日本人の心の情景をさぐる思索紀行シリーズです。隠れ念仏、家船、宗教都市大坂など、普段は表に出ない歴史的な事物が新鮮でした。全6巻。 |
いとう せいこう みうら じゅん | 見仏記 | 仏友二人による楽しい仏像紀行。 |
沖浦 和光 | 幻の漂白民・サンカ | 差別部落問題や漂流民を研究テーマにしてきた著者が、サンカの発生をつぶさに検証し、柳田国男の誤りや、三角寛によってゆがめられたサンカ像をただした傑作ノンフィクション。放浪民好きの方におすすめ致します。 |
瀬戸内の民俗誌 | 瀬戸内海民の子孫である著者が、己のルーツに思いを馳せ、漁民・水軍・家船(エブネ)と変遷してきた瀬戸内海民についてつぶさに語った新書ノンフィクション。 | |
小沢 昭一 | 俳句武者修行 | 俳句が趣味の著者があちこちの句会に参加した、楽しい俳句エッセイ。 |
景山 民夫 | 普通の生活 | 景山民夫の、遊び心にあふれノスタルジックでコミカルなエッセイのファンでした。「イルカの恋 カンガルーの友情」や「喰わせろ!」なども同様に楽しいエッセイ集です。 |
金子 兜太 いとう せいこう | 他流試合 | 伊藤園新俳句大賞の選者を務める二人の俳句対談。 |
加村 一馬 | 洞窟オジさん | 15で家でして以来、40年以上ホームレスをしていた男性の壮絶かつユーモラスな聞き書きサバイバル記。現在は社会復帰されているようです。 |
神崎 宣武 | 江戸の旅文化 | イギリスで近代団体旅行が始まる前に伊勢講を組織していた江戸の旅についての考察です。 |
北 杜夫 | どくとるマンボウ航海記 | 海外旅行自由化以前、船医としてマグロ漁調査船に乗り込んだ著者による、好奇心あふれるユーモラスな世界見聞記。 |
どくとるマンボウ青春記 | 旧制松本高校でのバンカラな日々を綴った青春記。旧制高校は、現在の大学の教養課程になりますが、それにしても昔の高校生は大人っぽかったのだなぁと思います。 | |
郷 隼人 | LOSENSOME隼人 | アメリカで終身刑の獄中生活を送る著者が朝日歌壇に投稿した短歌とエッセイ。壮絶な獄中生活を、ユーモアや抒情をからめて詠い、綴っています。 |
小林 恭二 | 俳句という遊び | 著者がプロデュースした句会の記録。当代の一流俳人を集めた贅沢な句会録で、句会の楽しさを伝えようと言う著者の意図が明確です。続編に「俳句という愉しみ」。歌合わせをプロデュースした「短歌パラダイス」もあります。 |
小松 和彦 | 日本の呪い | 妖怪や憑依などを専門とする民俗学者が、呪いや祓いなど日本の怨念浄化システムを克明に記しています。 |
小松 和彦 内藤 正敏 | 鬼が作った国・日本 | 日本の隠された歴史について語った対談集。伝奇好きの方にはおすすめです。 |
斉藤 政喜 | 耕うん機オンザロード | アウトドアライターの著者が、耕うん機での日本一周を目指した旅の記録。 |
斉藤 美奈子 | 文壇アイドル論 | 村上春樹、林真理子、田中康夫など、文壇のアイドルに関する勘違いな評論を俎上に乗せた痛快な評論集。 |
坂田 春夫 塩野 米松 | 啖呵こそ、わが稼業 | 香具師の會津家連合会六代目の親分に塩野米松が聞き書きしたノンフィクション。ちょっと渡世っぽい感じがなんとも魅力的で痛快です。 |
椎名 誠 | 哀愁の町に霧が 降るのだ | 著者のスーパーエッセイは数々あれど、ギャグと感傷においてこの本が一番好きかもしれません。狭いアパートで共同生活した、むさ苦しい青春の記録です(笑)。 |
わしらは怪しい探検隊 | オロカでパワフルな島旅の記録(笑)。「怪しい探検隊、北へ」など続編多数 | |
司馬 遼太郎 | 街道をゆく | 約30年にわたって続けられた歴史紀行。日本各地の歴史を辿り、海外にまで脚を伸ばしています。作家の書くことは想像も混じりますから史実的にはどうかと思いますが、この人、やはり名文家だと思います。同行者たちのユーモラスな描写も楽しゅうございます。 |
白石 一郎 | 海のサムライたち | 海洋時代小説の第一人者であった著者が、NHKの教養番組の内容を再編集した歴史ノンフィクション。海賊とも軍事船団とも海洋商人ともつかない水軍が魅力的でした。 |
東海林 さだお | ショージくんの さぁ何を食おうかな | 4コマ漫画の名手は名エッセイストでもあり、軽妙なエッセイを多数ものしています。好奇心の赴くままにさまざまに食べ歩いた記録であるこの本は、B級グルメなんて言葉が生まれる前からB級グルメ本でした(笑)。 |
料理、大好き | こちらは自分で包丁を振るってみた記録。軽妙で楽しい料理本です。 | |
白州 正子 | かくれ里 | 昨今の和風ブームは、白州正子ブームと歩を一にしているようのでしょうか。日本的な美意識に裏打ちされた傲慢さという感じがありますが、そういう目で辿った、土地の歴史の記録です。 |
杉浦 日向子 | お江戸風流さんぽ道 | 江戸暮らしの面白さ・楽しさを語ったエッセイ集です。ゆとりと楽しさに満ちた江戸がよく出来たシステムであったことが分かりました。 |
鈴木 カオリ | 青葉台駅チャリンコ2分 | 酒浸りの日々から急に自転車者競技に目覚めた著者ですが、落車事故を機に燃え尽き、その後自転車雑誌編集者を経て、伴侶と共に自転車店を開くに至るまでを語った熱血エッセイです。 |
高橋 順子 | 連句のたのしみ | 複雑なルールのある風流な遊び「連句」の楽しさを綴った一冊。夫である車谷長吉との歌仙が面白い(笑)。座の文学である連句は、他人との共同作業であり、参加メンバーによって流れが変わっていくあたりが興味深うございました。 |
竹内 久美子 | そんなバカな! 〜遺伝子と神について | 利己的遺伝子理論を世に知らしめた、軽妙な科学エッセイ。やや「とんでも」の気配も・・・(笑)。 |
竹村 淳 | ラテン音楽パラダイス | ラテン音楽評論家が好むところの音楽について余すところなく語った、恰好のラテン音楽入門書。 |
立川 志らく | らくご小僧 | 談志門下の落語家である著者が、落語の表題になぞらえて来し方を語った、コミカルでセンチメンタルでノスタルジックなエッセイ集。昭和30年代生まれで東京で少年少女時代を送った方には懐かしいのではないでしょうか。 |
寺山修司 | 書を捨てよ、町へ出よう | 高校生の頃に愛読したエッセイ集。頽廃や快楽やいかがわしさなど、「悪い大人」の怪しい魅力に満ちています(笑)。 |
寺山修司全歌集 | 俳人、歌人としても有名だった寺山の歌集は、土俗的、魔的、耽美的です。 | |
中沢 新一 | アースダイバー | 縄文海進期、海は東京の内陸部に入り込んでいて、その岬や半島部には現在にも残るような聖域があった。現代と縄文期の東京をつなぐ、スリリングな都市探訪ルポ。 |
僕の叔父さん 網野善彦 | 著者の義理の叔父である歴史学者網野善彦への追悼の記。叔父さんとの幸福な付き合いを語り、網野史学について俯瞰しています。 | |
中場 利一 | 岸和田少年愚連隊 | 「本の雑誌」への投稿から作家になった著者が、ゴンタクレだった少年時代を語った、コミカルで痛快なエッセイ。岸和田という町には悪い大人しかいないのかと思えてしまいます(笑)。 |
野田 知佑 | 日本の川を旅する | カヌーでの川旅の楽しさを綴った紀行エッセイ。80年代半ばに出版されたもので、川の環境破壊を嘆いていましたが、更に悪化が進んだのではなかろうかと思う昨今です。 |
北極海へ | カナダのユーコン川をカヌーで旅した記録。雄大な自然と、旅で出会う人たちが魅力的です。 | |
穂村弘 東直子 沢田康彦 | 短歌はプロに訊け | 編集者の沢田康彦が主宰するファックス歌会「猫又」に寄せられた短歌を、プロ歌人の二人が批評する楽しい鼎談集。続編「短歌があるじゃないか。」 |
松村 栄子 | ひよっこ茶人の玉手箱 | 芥川賞作家の著者が、いかにしてお茶にハマっていったかを綴る茶の湯エッセイ。いっときの共有空間である茶席の楽しさが伝わってきます。 |
宮原 昭夫 | さはら丸、西へ | 湘南に居住する著者と仲間が、中古のオンボロ漁船に乗って海の東海道中を試みます。スリルたっぷりの爆笑船旅紀行。 |
森 まゆみ | 東京遺産 | 東京駅、旧安田邸、奏楽堂など、近代東京の建築物保存運動に携わったルポ。貴重な建築物が保存されて良かったなぁと思います。 |
八木 啓代 吉田 憲治 | キューバ音楽 | 日本が誇るサルサバンドHAVATAMPA(本場でも評価が高い)のリーダーとボーカリストが、キューバ音楽の魅力と歴史について綴る音楽ノンフィクション。 |
吉村 平吉 | 吉原酔狂ぐらし | 戦前から吉原に住み着いていた風俗ライターが語る色町吉原の変遷。いかがわしい裏町の魅力でしょうか。 |
作 家 名 | 作 品 名 | 備 考 |
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A・ランシング | エンデュアランス号漂流 | 1915年、情熱家で夢想家でやや無謀な探検家シャクルトンが組織した、イギリスの南極陸上横断のための航海船が流氷海に閉じこめられ遭難。 驚異的なリーダーシップを発揮したシャクルトンと、その一行の奇跡の生還を描いた感動の冒険ドキュメンタリー。関連本が多数出ているようです。 |
ボブ・グリーン | 17歳 1964春 17歳 1964秋 | 高校の一年間の日記を再構成した青春グラフティ。恋と友情と部活動の楽しさに満ち、高校生が車を乗り回す、60年代アメリカの地方都市の豊かな高校生活も興味深うございます。 |
ピーター・ハクソーゼンほか | 敵対水域 | フロリダ沖で旧ソ連の原潜が故障。この危機から無事脱出できるのか!?ハイテク軍事スリラーそこのけの迫真ノンフィクション。 |
マイケル・J・フォックス | ラッキーマン | 若くしてパーキンソンを発病した人気俳優が、いかに病気と折り合って俳優活動を続けてきたかを綴っています。ハリウッドの裏側なども興味深いですが、「病気があったから現在の自分がある。だから僕はラッキーマンなのだ」と言い切る姿勢が前向きです。 |