父親がミステリーファンだったので、家にあったアガサ・クリスティやエラリー・クイーンなどを読んでいましたが、むしろ小学生の時にクラスで流行った「怪人二十面相シリーズ」の方が印象的です。本格よりもハードボイルドやサスペンスの方を好むのは、この幼児体験のせいでしょうか(笑)。
古典的な作品はほとんど知りませんので、自称ミステリーファンの偏ったセレクトでございます。
下線のあるものは日記かブログにリンクしています。
作 家 名 | 作 品 名 | 備 考 | |
---|---|---|---|
鮎川 哲也 | 黒いトランク | 日本の本格ミステリーの金字塔ではないでしょうか。丹那と鬼貫シリーズは多数ありますが、代表的なこの作品を挙げておきます。 | |
泡坂 妻夫 | 亜愛一郎の狼狽 | こちらは現代パズラーの金字塔(と言っても80年代半ばに出版されたものですが)。おっとりキャラの亜愛一郎探偵が明晰な頭脳で論理的に謎を解きます。続編「亜愛一郎の転倒」「亜愛一郎の逃亡」。主人公が愛一郎の先祖である「亜智一郎の恐慌」は時代ミステリーです。 | |
伊坂 幸太郎 | 重力ピエロ | 仲の良い兄弟の弟の、呪われた出生に因むサスペンス。淡々として力強い、兄弟の父親のキャラが秀逸です。 | |
陽気なギャングが地球を回す | 奇妙な銀行強盗団が活躍するピカレスクロマン | ||
チルドレン | 少しずつ設定を違えた連作です。どの短編にも登場するのが、屁理屈屋でいい加減で身勝手で傍迷惑な陣内という男ですが、彼の不思議な言動によって救われる人々もいます(笑)。幸福な読後感のある一冊でした。 | ||
石田 衣良 | 池袋ウェストゲートパーク | 今更言うまでもない人気シリーズですが、元不良少年のトラブル・シューターの活躍が爽快で魅力的です。続編「少年計数機」「骨音」「電子の星」。 | |
五木 寛之 | 風の王国 | 歩くことを喜びとしている青年が、現代に残るサンカの系譜と遭遇し、己のアイデンティティーを求めて動き出します。伝奇風味たっぷりの爽快なサスペンス。 | |
逢坂 剛 | 百舌が叫ぶ夜 | 人気の百舌シリーズの第一作。サイコミステリーと警察小説が一体になったスリリングな長編です。 | |
逢坂 剛 | あでやかな落日 | クラシックギターを巡るサスペンス。著者はギターとスペインのマニアだったはずです(笑)。 | |
大沢 在昌 | 新宿鮫 | 何をかいわんやの人気シリーズの警察ハードボイルド。孤独な使命感で任務をこなす鮫島が何とも魅力的です。 | |
大藪 春彦 | 蘇る金狼 | 一世を風靡したバイオレンス作家の作品群は膨大ですが(どれを読んでも同じ、などという浅薄な批評をぶっ飛ばすパワーですな)、最初に読んで衝撃を受けたのがこの作品でした。成り上がるためなら手段を問わない、冷酷で怜悧な主人公にカタルシスを感じます。 | |
垣根 涼介 | ワイルド・ソウル | 戦後の棄民政策で南米に移住し悲惨な日々を送る羽目になった日系移民の子孫が復讐の牙をむく。脳天気な日系ブラジル人と、彼に振り回される女性キャスターが笑えます。 | |
ヒートアイランド | 渋谷を舞台に、やくざ、現金強奪犯、チーマーが三つ巴の戦いを繰り広げるハードサスペンス。それぞれの背景が綿密に描き込まれているのがさすが垣根涼介でしょうか。クールです。 | ||
加納 朋子 | 掌の中の小鳥 | パーティで出会った若い男女が、自分たちの過去に起きたちょっとした謎や、現在進行形の不思議を語り、男の方が謎解きをしてみせる連作ミステリー。 安楽椅子探偵型の謎解きも洒落ていますが、その謎にまつわる事情が、ノスタルジックだったりセンチメンタルだったり苦い思い出だったり、趣の深い物語になっています。 | |
ななつのこ | 女子大生駒子の回りで起きる不思議な事件を、メルヘン・ミステリー「ななつのこ」の作者が、ファンレターに返信するという形で解決します。優しく心地よい本格連作ミステリー。 | ||
魔法飛行 | 「ななつのこ」続編。駒子と青年との文通で展開する謎解きミステリー。ほんわかと楽しい雰囲気は相変わらずですが、かなりサスペンスな趣向が不気味な雰囲気を盛り上げます。 | ||
スペース | 駒子シリーズの第三弾は、変わった視点からの物語で、ミステリーというより恋愛小説という感じでした。 | ||
螺旋階段のアリス | 会社を早期退職して探偵事務所を始めてしまったロマンティスト中年・仁木のもとに、押しかけ助手として聡明な美少女安梨沙が現れます。この二人が様々な謎を解く、「不思議な国のアリス」をモチーフにしたメルヘンテイストのミステリー。 | ||
虹の家のアリス | 「螺旋階段のアリス」続編。名探偵コンビの推理はいよいよ冴えますが、不思議な美少女の実像が少しずつ明らかになり、ほのかな悪意や善意の気持ち悪さなど、趣が深まっています。 | ||
北村 薫 | 街の灯 | 戦前の東京を舞台に、富裕なお嬢さん探偵が活躍する連作ミステリー。戦前の上流生活や東京の雰囲気が読みどころでしょうか。ミステリアスな女性運転手ベッキーさんの正体も気になります。 | |
京極 夏彦 | 百器徒然袋−雨 | 戦後の東京を舞台に、スーパーハイテンションで非常識で傲岸不遜で傍若無人で天衣無縫で眉目秀麗な迷探偵榎木津が強引に事件を解決する探偵小説。 事件自体は結構陰惨なのですが、榎木津の周囲の人間のほとんどは下僕扱いであり、滑稽な人間関係に笑わせられます。 | |
百器徒然袋−風 | シリーズ第二弾。榎木津の非常識度が更にパワーアップして痛快です。下僕たちの悲惨度もアップしています(笑)。 | ||
鯨 統一郎 | 邪馬台国はどこですか? | ダイニングバーの片隅で語られる歴史談義。トンデモな結論が論理的に語られます(笑)。 | |
小路 幸也 | 東京バンドワゴン | 大家族が暮らす古本屋を舞台に展開される、涙と笑いの人情ミステリー。 | |
真保 裕一 | ホワイトアウト | 巨大ダムがテロリストに乗っ取られた!熱血運転員が孤独な戦いを挑む傑作冒険小説。 | |
日明 恩 | それでも、警官は微笑う | 作者名はタチモリ メグミと読みます。正義感のために突っ走ってしまう型破りな刑事と、彼と行動を共にする剽軽な坊っちゃん刑事(ミステリーマニア(笑))の警察ハードボイルド。「新宿鮫」+「踊る大捜査線」という感じです。こういう物言いは不当かもしれませんが、女性作家とは思えないハードなアクション描写でした。続編「そして、警官は奔る」。 | |
鎮火報 Fire's out | 殉職した父親への反感から「楽して得するために」公務員の消防士になったはずの青年が、つい本気になって連続放火事件の謎に挑む青春ミステリー。消防士としての成長も読みどころです。続編「埋み火 Fire's out」 | ||
田中 啓文 | 落下する緑 | ジャズミュージシャンのコンビが、音楽の現場で起きる怪事件を解決します。ジャズの雰囲気が濃密なユーモアミステリー。 | |
西澤 保彦 | 瞬間移動死体 | SF的な設定で本格推理の謎解き、尚かつスラップスティックでもあるという、不思議な作風を打ち立てた著者の作品は多数ありますが、この範疇では一番最初に読んだもので、テレポーテーションと謎解きを組み合わせた本作を挙げておきます。「七回死んだ男」「人格転移の殺人」「死者は黄泉が得る」等、同様の作品多数。 | |
解体諸因 | こちらは論理性を追求した匠千暁シリーズ。酒さえあればいいという、浮き世離れした仙人のような学生が身近で起きる謎を解決します。刊行と、作品内の時系列がバラバラなので、主要人物の動きを追いたい方は時系列順に読んだ方がよろしいかと思います。 | ||
西村 寿行 | 赤い鯱 | 大藪春彦同様、バイオレンス小説で一世を風靡した作家は多作ですが、一番好きだったのは「鯱」シリーズでした。謀略の裏で、超人的な活躍をする特務集団の活躍を描いた奇想天外で痛快なシリーズで、「赤い鯱」はシリーズ第一作です。 | |
東野 圭吾 | 片想い | 元マネージャーから性同一性障害であることを打ち明けられたアメフト部の元キャプテンが、仲間を守るために奔走する過程で殺人事件に出くわします。文学的香気の漂うミステリー。 |
作 家 名 | 作 品 名 | 備 考 | |
---|---|---|---|
ジェフリー・アーチャー | 百万ドルを取り返せ | 信用詐欺にあった4人組が逆に詐欺を仕掛ける、ユーモラスなコン・ゲーム小説 | |
ジャネット・イヴァノビッチ | 私が愛したリボルバー | リストラされたバツイチ三十路女が、バウンティハンター(保釈保証失効人。現代の賞金稼ぎ)に転職!愉快なドタバタハードボイルド。幼なじみの刑事との恋の行方も興味を持たせます。「あたしにしかできない職業」など続編多数。 | |
アンドリュー・ヴァクス | フラッド | 世間の裏側で生きるアウトロー探偵が、信頼できる仲間と共に、児童虐待者、小児性愛者を追いつめていくハードボイルド。続編「赤毛のストレーガ」「ブルー・ベル」など。 | |
W・D・ウィングフィールド | クリスマスのフロスト | 上層部には評判が悪く、平警官からは受けがいい、お下劣この上ないフロスト警部が持ち前の正義感で事件を解決します。彼を部下に持った若手エリートの災難が笑えます。続編「フロスト日和」「夜のフロスト」。 | |
ドン・ウィンズロウ | ストリート・キッド | 町の浮浪児だったところを腕利きの探偵に拾われ、有能な探偵として育てられたニール(腕っ節は弱い。繊細なのに減らず口叩き)が、誘拐された上院議員の娘を追います。リリシズムとユーモアが一体になった好編。続編「仏陀の鏡への道」「高く孤独な道を行け」。本国では五部作が完結していると言うことですが、本邦ではなかなか続刊が出ません。早く出せ!(笑)。 | |
キャロル・オコンネル | クリスマスに少女は還る | かつて双子の妹を拉致され殺された過去がある刑事が、再び連続少女失踪事件を捜査することになります。 ルージュ・ケンダルは、高い知性とひねくれたユーモアと傷つきやすいナイーブさと狡猾さや冷酷さを持ち合わせたなかなか複雑な性格で、妹を殺されたことで自分の半分を失っていますが、捜査の過程で再生していくあたりも読みどころでしょう。最後に明らかになるクリスマスの奇跡に、背筋がゾクゾク致しました。 | |
氷の天使 | 警官夫婦に養育された元浮浪少女キャシー・マロリー刑事が、持ち前の頭脳と根性とハッキング能力で事件を追うサイコミステリーシリーズのの第一弾です。このシリーズの魅力は何と言ってもキャシーの造形でしょう。養父母には深い愛情を持っていますが倫理観が欠如しており、ストリートチルドレン当時のまま犯罪者の心を持ち続けています。このあたりがなかなか恐い警官ですが(笑)、養父の友人たちは、別な部分で純粋な彼女を愛しているのでした。続編「アマンダの影」「死のオブジェ」など。 | ||
エリック・ガルシア | さらば、愛しき鉤爪 | 現代に人間の皮をかぶった恐竜が生きている!人間界の偉人は、実は、知性・体力ともに優れている恐竜が多いそうです(笑)。設定はSFチックですが、筋立ては「卑しい町を行く騎士」というオーソドックスなハードボイルド。続編「鉤爪プレイバック」。 | |
ジェイムズ・クラムリー | 酔いどれのほこり | 自然豊かなモンタナを舞台に、アル中探偵のミロが活躍する、リリシズム溢れるハードボイルド。別にシュグルーが主人公のシリーズがありますが、二人の共演作もあります。続編「さらば甘き口づけ」「ファイナル・カントリー」など。 | |
フェイ・ケラーマン | 水の戒律 | 厳しい戒律を守るユダヤ人コミューンで起きたレイプ事件を、ポパイの異名を取るタフで優しい刑事ピーター・デッカーが捜査することになります。ユダヤ人社会の複雑な人間関係を描いて興味深いですし、美しい未亡人リナとの恋も大きな要素です。続編「聖と俗と」「豊饒の地」「贖いの日」「墜ちた預言者」「赦されざる罪」。 | |
慈悲のこころ | 中世のロンドンを舞台に、文豪シェークスピアの恋と冒険を描いた時代ミステリー。 | ||
ハーラン・コーベン | 沈黙のメッセージ | かつては大学バスケットボールのスタープレーヤーだったスポーツ・エージェント(代理人)が、スポーツ選手のサポートをする傍ら、図らずもスポーツ界の闇の部分を明るみに出すことになる、センチメンタルなミステリーシリーズの第一作です。 この手のシリーズには凄腕の相棒というのがよく出てきまして、この作品の場合、大富豪でテコンドーの達人という友人がいてサポートしてくれますが、殺人や拷問に禁忌を持たない危ない奴で、その筋ではサイコ・ヤッピーと呼ばれているのでした(笑)。なかなか魅力的です。続編「ロンリー・ファイター」「カムバック・ヒーロー」など。 | |
マイクル・コナリー | ナイト・ホークス | 独自の行動律ではみ出しがちになる刑事ハリー・ボッシュを主人公とする警察ハードボイルドの第一作。LAの暗闇の部分を描いて迫力があります。孤独で孤高なボッシュが魅力的。ボッシュに対してどうしても松田優作のイメージが湧いてきてしまうのは、彼が日本のハードボイルド映像を担っていたからでしょうか。続編「ブラック・アイス」「ブラック・ハート」など。 | |
ジェフリー・ディーヴァー | ボーン・コレクター | 脊髄損傷の四肢麻痺患者で、元は有能な鑑識捜査官であるリンカーン・ライムが、集められた微細証拠物件をもとに異常犯罪者の追い詰めるジェット・コースター・ミステリの第一作。狷介ながら悪を憎む気持ちが強いリンカーンと、彼を手助けするアメリア・サックス(赤毛の美女で、射撃の達人でスピード狂、関節炎持ち(笑))がいいコンビです。続編「コフィン・ダンサー」「エンプティ・チェア」「「石の猿」「魔術師(イリュージョニスト)」 | |
悪魔の涙 | こちらは筆跡鑑定士が犯人を追い詰める手に汗握るミステリー。 | ||
青い虚空 | 伝説のハッカー同士がバーチャルな空間で壮絶な追跡劇を展開します。ハッカーというのは、あちらではコンピュータに精通するマニアのことで、日本で言うハッカーのような存在はクラッカーと言うそうです。 | ||
カール・ハイアセン | 大魚の一撃 | 釣り大会に仕掛けられた不正を追う私立探偵のドタバタな活躍。ハイアセンの作品は大体どれも、フロリダを舞台に俗悪な開発業者や政治家と過激な環境保護運動家との戦いをスラップスティックに描いていますが、よく登場するスキンクという人物があぶなくて痛快です(笑)。 | |
ロックンロール・ウィドー | 死亡欄担当記者がロックスターの不審死の真相を追いかける、ハイアセンの作品にしては真っ当なハードボイルド(笑)。敏腕記者ながら、経営陣に逆らい死亡欄に飛ばされているジャックは、仕事のせいで死への恐怖観念に取り憑かれていますが、有名人の没年令と我が身を引き比べているあたりが笑えてかつ深刻です。 | ||
スティーブン・ハンター | 極大射程 | 伝説の狙撃兵ボブ・リー・スワガーが何者かに冤罪を着せられ、逃亡しながら自力で真相を突き止めようとします。射撃のシーンが何と言っても迫真です。ハンターの作品は、登場人物を違えながら少しずつ関わっているものが多く、作品世界が複雑で困ります(笑)。「ダーティホワイトボーイズ」「狩りのとき」など。 | |
ダン・ブラウン | 天使と悪魔 | 中世の科学者たちの秘密結社「イルミナティ」が蘇り、バチカンにテロを仕掛ける!宗教象徴学者のラングドンは犯行を阻止できるのか!?伝奇風味たっぷりのジェット・コースター・ミステリー。話題作「ダ・ヴィンチ・コード」の前作です。 | |
エド・マクベイン | 警官嫌い | ご存じ87分署シリーズ第一作。連続警官殺人事件と刑事たちの私生活が並行して描かれ、人間味豊かな警察ミステリーになっています。日本の刑事ドラマはこのシリーズに大きな影響を受けたような気が致しますね | |
シャーロット・マクラウド | にぎやかな眠り | 農業大学内で起こる事件をピーター・シャンディ教授が解決するシリーズの第一作。のどかな田園や好人物たちが楽しゅうございます。 | |
ピーター・ラブゼイ | 最後の刑事 | 一筋縄ではいかない有能な刑事ダイヤモンド警視を主人公とする第一作。尊大で傲慢で科学捜査が嫌いな警視ですが、憎めないキャラです。この性格故に敵を作りがちですが・・・(笑)。続編「単独捜査」「バースへの帰還」「地下墓地」など。 | |
イアン・ランキン | 青と黒 | スコットランドの警察のはみ出し刑事リーバス警部が孤独な戦いを続ける、緊迫感の漂うシリーズ。「青と黒」はシリーズの途中ですが、多分日本での翻訳では第一作です。リーバスは政治的な問題を抱えており、出世は望めませんが(望んでもいませんし)、有能な刑事であり、犯人を追い詰めていくのでした。孤独で狷介でバツイチの中年ロックマニアという設定が何と言っても魅力的です。続編「首つりの庭」「死せる魂」など。 | |
S・J・ローザン | チャイナタウン | 華僑の女性探偵と、彼女のパートナーである白人男性が交互に主人公を務める“リディア・チン&ビル・スミス”シリーズの第一作。米国内の中華世界の面白さと、二人の微妙な距離が読みどころです。続編「ピアノソナタ」「新生の街」「どこよりも冷たいところ」「苦い祝宴」 |